113 ページ33
妖艶な目つき。体温。
揺れる視界と、おにいちゃんの頬に伝う汗。
私の火傷の傷跡に、なんどもくちづけた。
好きだよ、って何回も囁いた。
優しい、指先と声。
愛おしさに、何度も、意識が遠のく。
私はいつの間にか、緊張と疲れで意識が危うくなっていたみたいで。
気づいたら、おにいちゃんの腕の中で、すりすりと、頬ずりされていた。
「……あれ？」
「なんか意識朦朧としてたねA」
「……ごめんなさい」
「何が？」
「されるがまま……もっと勉強しとくべきだった？……嫌じゃないのにヤダヤダってばっかり言ってごめんなさい」
「ふふ」
「笑われた……」
「いや？可愛いこと言うなぁってね」
おにいちゃんの優しい、甘い声。
体に響く。幸せでまた泣けてきた。
「ごめんね」
「何が？」
「忘れないよ」
「え？何が？」
「先輩の事、忘れません。思い出ありがとうございました」
「え？」
おにいちゃんが、がばっと起き上がった。
私の肩をぐっと掴んで、怖い顔で見下ろす。
「本気で言ってんの？」
「お父さんとなんか約束してるんでしょ？」
「……」
「無かったことにして……？私も忘れないけど、忘れたふりならできるから」
「正気？A」
「本気だよ。最後に思い出ありがとう」
おにいちゃんが頭をわしわし、と、掻いた。
「や、待って？……だって、でも……ああ、そうだ、ごめん……」
「約束の内容って、何？」
「……ある条件と引き換えに……」
「うん」
「俺が社会人になって一人前になるまでは、Aとは二人で会うなって言われた」
「……」
「約束しますって言った。両想いで引き裂かれたって思ったらAはきっと悲しくて耐えられないだろうし、お父さんを責めそうだし」
「うん」
「もうAのこと好きじゃないフリしなきゃ俺だって耐えられなかったよ、すれ違うたびに信じて待っててって叫びたかったよ」
やっぱり、そんなことだと思ったよ。
おにいちゃんが、もう一度、私をぎゅう
っと抱き寄せた。
「でもさ、楽しい高校生活で、ほんとに信じて待ってくれるのかわかんないよね」
「……」
「寂しくて他の誰かのものになっちゃうかも……」
「……」
おにいちゃんが、はぁ、ってため息を吐いた。
息がまつげにかかる距離にいる実感。
「二人で会っちゃったら、こうなるってこと、お父さんわかってたんだよね、きっと」
おにいちゃんのおでこが私のおでことこっつんこ、した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4722人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
