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櫻井くんが怒ってます。
ずっとずっと怒ってます。
目があった。
睨まれた。
「早く企画書チェックして返してください」
憎まれ口まで。
反抗期か？
びくびくしながら様子を窺う。
「Aちょっと！」
課長が私を呼ぶ。
「はいっ！」
正直、怒ってる櫻井くんにかまってる暇などなかった！
大野くんも忙しそうにバタバタしてる。
引き継ぎとか大変だもの。
何が大変って、係長が課長の引き継ぎが忙しすぎて係長の仕事がもう大野くんに回ってきてるってことだ！
「こことここの会社はAが殆ど把握してる、恥を忍んでAに教えを請え！」
「……はい」
「こことここは大野がわかるはず、残りはお前自分で把握出来てるだろ」
「……はいー」
「最悪ロンドンに電話してきなさい」
係長の眉が下がったままになってる。
お気の毒。
社内の異動とかなら内線で聞けるし最悪顔つなぎとかもできるけど課長は来週には海を渡っちゃうもんね。
しばらくはホテルぐらし。
GWに引っ越しするらしい。
まぁ奥様も英語ペラペラだし何も問題なさそうだけど。
みんながバタバタしている中、課長のデスクに電話がかかってきた。
課長は隣の会議室で係長と話してる。
私も課長に頼まれた書類を手にしていて手が塞がってる。
櫻井くんが課長宛の内線1番の電話をとったのを横目で見た。
「ああ、はい。回してください。……Hello？」
おおお。
国際電話だ。
いつも課長が取るから気にもしてなかったけど今後いきなりかかってきた国際電話は誰が取るの！
皆不安そうに櫻井くんを見た。
「I'm afraid, but Mr OIKAWA is……」
んん？返事してる。
しかも平然と。
電話を切って、課長のデスクにメモを残してるところに課長が戻ってきた。
「あ、今、ロンドン支社から電話ありました」
「出てくれた？」
「ご用件をお伺いして、急ぎではなさそうだったのでまた折り返すとお返事しました」
「英語できるんだ？」
「日常会話くらいなら」
「そっか、頼もしいな」
課長が嬉しそうに笑った。
この光景、前も見た。
『……松本くん、英語できるの？』
『ええ、日常会話くらいなら』
そう言った、私のイケメンすぎる同期はどこに行った？
櫻井くんも、行っちゃうかもしれない。
「今日、送別会だから仕事さっさと終わらせてね」
大野くんが私の肩をポン、と叩いた。
落ち込む気持ちが、止められない。
ロンドンなんて。
ロンドンなんて大嫌い。
心の中でモヤモヤが広がっていく。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
