4(8/1) ページ5
笑顔を見た途端、ぽとり。
手に持ってた携帯が、下に落ちた。
「あああ！昨日買ったばかりなのに！」
慌てて拾おうとしたら、今度は私がスツールから落ちた。
うううう。恥ずかしい。
いきなり視界から消えた私をみて、相葉くんが、あはあははは！ってあひゃひゃに近い笑い方で落ちてる私を見下ろした。
「携帯あった？」
「ありました」
「傷ついちゃった？」
「まあ、いいんです、近々落とす予定だったので！」
「ええ？落とす予定？」
「はい、あの、手が基本乾燥しているので、すべりやすく……」
「あは。ほら、ん！」
ああ、手を伸ばしてくれた。
いいのかな、触って。
にっこり微笑む、天使。
手を出したら、ぐいっと引っ張りあげてくれた。力持ち。
そういや、腕相撲強かった。
相葉くんが、私の手を握って、ちょっと目を見開いた。
「ホントだ乾燥してる！」
「そうなんです……夏場でもカッサカサで」
「カッサカサって！俺と逆だよ！俺は、基本手汗でベトベト」
手のひらを眺めてる姿がああ、好きです。
「ベトベト憧れる」
「憧れるのー！なんでー！」
ああ、目を見開くとこも好きです。
「だって、……紙を一枚だけ取るのとか……滑って取れなくて」
「スーパーの袋とか？」
「あ！そう！指ペロッてするおばちゃんにだけはなりたくないと思ってたのに」
「え？ぺろってしてるのお？」
「してません！」
「びっっっくりしたあ」
にこにこにこにこ。
ああ、天使だ。天国ですか、ここ。
「なにちゃん？」
「え？」
「名前。なにちゃん？」
「Aです」
「Aちゃん、覚えた！」
相葉くんがにっこり微笑んで、またね、って友達の元に行った。
ああ、一生忘れない、この日を一生忘れないです、私。
またなんて絶対ないけど、次のまたを楽しみに天国でまだかなあって待てる気がする。
なんてちょっと自分でも怖い事を考えてたら、
ほんとにちょっと後に、また、が来た。
「大丈夫？時間。旦那さん、待ってんじゃないの？」
「へ？」
私、絶対相当間抜け面してた。
相葉くんが、あははって笑った。
「旦那さん、お家？」
「……イマセン」
「え？仕事？」
「いえ？結婚してません。彼氏もいませんけど」
私を連れてきた同僚が、まずった、みたいな顔をした。
私の横にいる同じく同僚のももちゃんが、あーって、言った。
「おいー。彼氏も旦那さんもいないって！」
相葉くんが、そういって、同僚が頭を抱えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2310人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年7月31日 19時
