〇≠無の証明 Ⅰ (ページ35)

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「盗聴なんかは取り締まれないし、消える落書きも精々器物破損。破損もしてないからイタズラレベル」
「……」
「胡散臭い商売だってさ、自己啓発セミナーなんだから、まぁ自由だよな、うん」

櫻井さんが大きなため息を吐いた。
「直接手を下してなかったから、大した事件にもならなかった、つまり俺らはおおがかりなキューピッド程度の役割で」
「あー……」
「……ま、結局アレだ。霊はいない！」

「居るよ？」
松本さんがケロッとして言った。
「翔さんに女の生霊が憑いてる」
「うそ！かわいい？」
「……なーんだ、霊かと思ったらAだった」
「んだよ、こいつ？やだよこんな女」

本当に嫌そうに言いやがった。
「櫻井さんは盗聴器を仕掛けたいくらい好きな彼女がいるんでしたよね？」
「え？」
私の言葉にきょとん、としてる。

「サヨリに言ってた、彼女に盗聴器を仕掛けたいみたいなこと」
「あ？……あーあーあー！言った！」

違うの、あれは違うんだって！
誘導！のつもりで！俺彼女いない！
超募集中！

「そんな必死に否定しなくても」
「心を読むなよ！」

「彼女……」
二宮さんが、はぁ、って溜息を吐いた。

「俺の女神様に勝てる女はどこにいるのかしらね……」
「サヨリも偽物だったしね」
「Aさぁ、ちょっと女神様に挑戦してみてよ、勝ったら俺と付き合えるよ？」
「あ、結構です」
「拒否んの早！」

「ねー、Aちゃんって彼氏いるの？」
相葉さんがキャンデーをガリガリ噛んだ。

「さて、どうでしょう」

「いません」
櫻井さんが勝手に答えた。

「何勝手に答えてんのよ」
「コンパみたいな駆け引きやってんじゃねーよ！暇か？お前暇なのか？」

「実際暇じゃん、仕事ねーの？」
松本さんが事件の調書なんかをパラパラ見ながらため息を吐く。

「まともな事件ねーの？退屈」
「じゃー大野さんに何にも効かない理由調べてよ！」
二宮さんがうたた寝してる大野さんを見た。

「うーん……」
皆が、大野さんを見下ろした。

「ん？なに？昼飯？」
大野さんが目を覚まして周りを見渡して、皆が、微笑む。

誰一人かけても解決しなかったんじゃないかな、この事件。

なんてことをちょっと思ったら櫻井さんが目で言ってきた。

……俺らはセットで一人前なんだ。

……なるほど。

……もう、お前も入ってるぞ？

照れくさそうにそう言って、ふ、と櫻井さんが笑った。

……悪くない。

くすぐったくて、私もちょっと笑った。