巫女と巫覡…7/25 ページ26
方瀬川って確か、30歳だったよね。
前に見た資料を思い出す。
女が方瀬川に一方的に恋心を抱いていて、邪魔な女を消していったんだ、という仮説は、もしかしたら正解か。
男好き。
集中して、様子を見る。
はしゃぐ女。
そりゃあ、可愛い男と爽やかな男が目の前に居て、嘘でも自分を見て目をきらきらさせてたらいい気分だわよ。
なにが、心を浄化させるには、とか幸いを引き寄せるためには、だよ。
受付とかしていた方瀬川とか犀東さんが死にそうなくらい悩んでるのに効果なんて全くないってコトでしょうが。
ものすごく真剣に聞いてるフリをしている櫻井さん。
一瞬目が合った。
……こら、何とかしろ。
……了解。
「サヨリ様って、綺麗なお名前ですよね、本名ですか？」
私の問いに、二宮さんが、ふふ、って微笑んだ。
ナイスパス、って言ったように見えた。
「どうかしら」
……この女嫌いだわ。
おっと、いきなりサヨリの意思が飛んで来た。
嫌われた。
少しおかしくなって、笑う。
「憧れます、私もそんな風に歳をとりたいですね」
どうして喧嘩売ってんだ！
櫻井さんが、目をまるくした。
「あなたはお若いし、お綺麗だからわからないでしょうけれど、今から徳を積まなければ、歳を重ねたときに幸せが逃げて……」
云々。うぜ。
「どうしたらそんなお綺麗でいられるのかなと純粋に思いまして。何かされてます？」
「何かって？整形とでもいいたいのかしら」
「まさかそんな、魔力とか？」
犀東さんがおろおろしてる。
私の言葉に、サヨリ様が目を細めた。
「あなたのようなお方でも、神は見守ってくださいます」
「何の神ですか？髪の毛？今日ね、犀東さんとお茶してるときに何者かの髪の毛が椅子にべったりと……怖かった」
「……まあ」
櫻井さんがまだ早い！って目で言って来た。
二宮さんはくすくす笑ってる。
「その髪ではなく。女神です。弁天様のお声を私は聞くことができるのです」
「弁天様」
「七福神の、弁財天様のことですわ」
「神の声を聞くことができる、と」
「ええ、わたくしは、巫女ですから」
二宮さんのほうをちらっと見たら、二宮さんはまだ澄ました顔をしてる。
「弁財天、といえば……確か、琵琶を弾く、美しい女神様だった気がしますけど。何か芸事はされていらっしゃる？」
「特に何も」
「二宮さんは？」
たまらず聞く。
俺が本物、って言った。ってことは二宮さんの女神は弁天様なんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2365人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年7月15日 20時
