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「な……！何これ」
周りの人がこっちを一斉に見て、慌てて相葉さんと松本さんが飛び込んできた。
「どうした？」
「これ」
彼女の座っていた椅子が濡れていて、長い髪の束が散らばっていた。
「……」
「すみません、この席に誰か近づきませんでしたか？」
慌てて駆けつけた店員に聞く。
「いえ、誰も……」
「誰か店から出て行きませんでしたか？」
「女性二人連れのお客様が先ほど出て行きましたけど……」
「松本さん、見ました？」
松本さんに聞く。
「見たけど、別に普通の……追いかける」
松本さんが走りだした。
「相葉さんは?」
「俺はトイレに出入りする人がいないか見てて……」
「私たちのテーブルに近づく人は見ていない？」
「ずっとゴソゴソしてたらわかるだろうけど通りすぎるくらいならわかんないよ！」
近くの席の人にすみません、と声をかける。
「少し、いいですか？」
「……え？なんでしょうか？」
商談していたようなサラリーマンの二人組が怪訝な顔で私を見た。
「この席に近づいた人を見ていませんか？」
「えっと、さっきの店員と、出て行った二人組の女と、……今、店に入ってきた人くらいしかこの横を通ってませんけど」
「入ってきた人？」
「あの人です」
サラリーマンが指を差した方向には、疲れた表情の営業らしいサラリーマンがいた。
「失礼します、少しお話宜しいですか？」
「……なに？君は」
「突然すみません。あの席を通った時異変を感じませんでしたか？」
「いえ……？水がこぼれてる、とは思ったけど」
な、なに？
この人なに？
あー、涼しい。
アイスコーヒー飲みたい。
男から全く関係のない意思が伝わる。
この人じゃない。
出て行った二人組の方が怪しい。
周りを見渡す。
……あの嫌な視線が、消えてる。
この事件の犯人は人間だ、と、直感が言う。
霊の存在を疑ってるわけではない。
けど、霊がこんなことするか？
水浸しとか髪、だとか。
「ビニール袋いただけますか？」
椅子の上の水分と髪を集めて手にする。
「調べてもらいます、こんな手の込んだことを幽霊がするとは思えない」
私がそう言い切ったら、相葉さんがちょっと笑った。
「翔ちゃんみたい」
一瞬イラッときたのはなぜだ。
「席を変えますか？」
「お待たせ」
櫻井さんが喫茶店に顔を覗かせた。
「智くんとニノも連れてきたよ、祓っちゃう？」
二宮さんが、面倒くさそうにはぁ、と溜息を吐いた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年7月15日 20時
