あなたをさらいに夜がくる ２【文スト】【深夜廻】

夜廻４３.黒の思惑 ページ6

部屋を後にし、扉を閉めたポートマフィアの
幹部は、深いため息をついた



‥‥少し喋り過ぎたかもしんねェ



「あーーッ、たくッ」



頭をがしがしとかくと、彼は廊下を進もうとして‥‥



その足をとめた



「‥‥‥芥川」


廊下の角から現れたのは、
黒の外套をまとった男


「‥‥この部屋に来ていたのですか」

「あァ。ポートマフィアに幽閉された女の
様子見にな」


「その割りには
随分と話し込んでおられたが？」


「‥‥やッぱり盗み聞きしてやがッたか」



途中から、部屋の外に気配は感じていたのだ



中原は少し視線を遠くにやった後、口を開いた




「‥‥首領に、頼まれたンだよ」



「首領に？」



芥川は少し眉をひそめる


「あの女を探れッてな」


＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿


「‥‥水無月 A？」

「そう、少し前に芥川君が連れてきた女の子
なのだよ

ウチに入って欲しいんだが、中々了承して
くれない」


「はァ‥‥」


首領室に呼び出された中原は、首をひねった

首領が直々に戦力にしたがる女？

しかも、芥川が殺さず連れてきた


「まぁ、逃がす気はないんだけれどね

それで、君に頼みたい事があるんだ」

＿＿＿彼女の事、探ってくれないかい？



更に疑問が増えた


「個人情報なら、調べれば出てくるのでは‥」


「出てこない」

「え？」

「なんにも出てこないのだよ。

彼女が今のバイト先で働く以前の事が」



そんな事あり得るのだろうか


彼は目を見開いた



このポートマフィアの傘下はごまんといる


御飾りの組織ではなく、勿論のこと、情報網
だって膨大だ



その全ての情報網に、引っ掛からなかった？



「彼女は傷付けたくないからね

なるべく穏便に聞き出したいのだよ

でも私はすでに警戒されてしまっているし、
芥川君は彼女への執着が強すぎる」



藤色に光る瞳が、固執の影をうつす



この時点で中原は大混乱に陥っていた



なるべく傷付けたくない？




あの、太宰以外興味がない芥川が執着してる？




見る限りでは、恐らく首領も




「だから、君に聞き出して欲しいんだ


君なら初対面だし、彼女は探偵社の下で
バイトしているからね


共通の話題を話して、誘導するのが得策だ


彼女が「ポートマフィアで唯一頼れる存在」


それになれれば、警戒心も薄まると思うのだけ
れど」




要するに、
「お兄さん的な存在になって警戒を解け」と


なんだか中原は目眩がしてくるようだった

夜廻４４.知らなくていい→←夜廻４２.兄妹

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す