感情の関係 ページ33
沖田side
·
『あ、ありがとうございます』
Aさんはきょとんとしたあと、ぱっと笑顔をうかべた。
…意識しようとした傍から何も考えずに喋ってしまった。言ったのが普通の褒め言葉だったのが不幸中の幸い。
もっと気を引き締めないと、本当に何をしでかすかわからない。もう一度肝に銘じよう。Aさんへの不用意な発言禁止、距離を置くこと。
頼むぞ、無意識。
着替えのために俺は一旦自室に戻る。
最低限の生活用品と、僅かな娯楽が置かれた部屋。屯所の自分の部屋の方がよっぽど使用感がある。本棚に目をやれば、武器の手入れ本や落語のＣＤが並んでいて、これAさんが見たら不審がるだろうな、なんてどうでもいいことを考えた。
Aさんは。
Aさんは、俺のことをどう思っているのだろうか。
いつになく女々しい考えが浮かび、思わずシャツを脱いでいた自分の手が止まる。
契約相手、偽装の夫、なんて俺の《呼び名》は思いつくものの、彼女の俺に対する《気持ち》は分からない。
果たしてAさんは俺に対してどんな感情を持っているのか。着替えを再開しても頭の中でその疑問が居座り続ける。
作戦のときのデートを、確か彼女は楽しいと言っていた。
少なくとも、俺のことを嫌がってはいないのだろう、ということはわかる。嫌な相手と一緒にいて、楽しくはないだろうから。
でも、それはデートに対する感情だ。俺への気持ちじゃない。
じゃあ、俺のことはどう思ってるのか。
そして、なんで自分はこんなに彼女の気持ちが気になるのだろう。
人の目を気にしたことが、無いわけじゃない。でもそれはほとんどゼロに近しいわけで、なぜ自分はこんなに、アホみたいに真剣にAさんの感情を気にしているのか。
俺に協力してくれている相手だから、だけではないはずだ。じゃあなんで。
それに、俺自身はAさんのことをどう思っているのだろうか。
そんなの簡単だ、それは、
自分の疑問に自分で答えようとしたところで、行き詰まる。
…わからない。俺が彼女をどう思っているのか。嘘だろ、と言いたくなる。
自分で自分の感情がわからなくなることなんて、初めての経験だった。
分からないだらけだ、本当に。
ふと部屋の隅に置いた小さめのスーツケースに目をやる。新婚旅行のために、引っ張り出してきたそれ。
旅行で、答えが出るだろうか。
人生初めてともいえる経験の。
彼女だけと過ごす一泊二日間、何かしらの答えが出ることを祈りつつ、俺はリビングに戻った。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (
レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです！更新頑張ってください！ (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます！嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします！ (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです！無理矢理原作に沿っていなくて，とても読みやすいです！更新頑張ってください！ (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みるくれーぷあいす | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時：2019年8月25日 22時
