出発の関係 ページ34
Aside
·
目覚まし時計のアラーム音。ベッドから這い出し音をとめ、時計の針を確認する。
いつもより小さい数字を指す短針に、カーテンの隙間から入ってくる、いつもより柔らかい日光。
久しぶりの早起きだ。
心臓が少し上擦っている自分に、小学生みたいだなあなんて苦笑しつつ、部屋の隅に置かれたボストンバッグに目をやった。
__沖田さんとの新婚旅行、当日である。
京都への一泊二日。
…好きな人と、だ。
旅行が決定した時はそんなに重く考えていなかったけど、考えてみれば、好きな人と二日間まるまる一緒、必然的に距離も近い。それに気づいた一昨日の衝撃は凄まじかった。それ以降、私は遠足を待つ小学生のように心臓を昂らせている。
まあ、もちろん不安もある、けど。
私は誰かに言い訳しながら洗面所へ向かう。
《Aさんは、両想いになりたくないんですか》
唐突に脳内に蘇った立花さんの一言。
あまりの脈絡のなさにびっくりして、思わず歯磨き粉を歯ブラシから零してしまった。慌ててティッシュで拭き取る。
不安、という程にもならないことだけど。
沖田さんが私をどう思ってるかが全くわからない、ということに、割と最近私は困っている。
勿論、私が沖田さんに寄せるような感情は持っていないだろうし。でも新婚旅行には前向きだった。少しは、友達くらいには思ってくれてるのかな。
この二日間で、沖田さんの気持ちが窺えたらな、なんて。
自分の恋心を自覚してから日が経つにつれて、なんだか強欲になっている気がする。
「おはよーございまさァ…」
『あ、おはようございます』
支度を終えて着替えを終えたタイミングで、普段より更に眠気を押し出しながら、沖田さんがずるずると洗面所にやってきた。
彼は朝に弱い。今にもまぶたはくっつきそうだ。ふわあ、と欠伸を漏らす声が聞こえた。
でも、歯磨きやら洗顔やらを終えて出てきた時の沖田さんはだいぶしゃきっとしている。
今朝も多分に漏れないようで、形の良い目はすっかり見開かれていた。
いつもながら、鮮やかな変化。
感心しつつ、私は荷物の確認をしようと部屋に戻る。
***
「忘れ物、大丈夫ですよねィ?」
『多分。まあ、最悪現地で買えるものは買っちゃいましょう』
それぞれの荷物を持ち、玄関に立つ。
今から駅に向かい、新幹線に乗るのだ。
このマンションの一室とも、二日間お別れ。
相変わらず鼓動の速い胸を抑えつつ、私と沖田さんは外へのドアを開けた。
新婚旅行へ、いざ出発。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時