｢こんにちは、もう一人の私｣

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｢今日は水を電気分解する実験だっけ｣
｢そうだよ｣
三人で理科室に足を踏み入れた時には、既に彼はいた。
私は思わずため息をつく。

アミが声を潜めて
｢ねえ、かっこよくない？｣
と同意を求めてくる。
しかし今の私にとっては恐怖でしかないので、｢え、誰が？｣ととぼけてみせた。
それに対しマユは｢分かる！ 不思議な感じもいいよねっ、高木先生！｣とはしゃぎだす。
｢…………｣
マユはこういうのがタイプなのか。

確かに肌、髪共に綺麗で中性的かつ独特なオーラを放つ高木先生だが……昨日の状況のせいだろう、私は彼を好意的に見られない。

アミは早速先生に媚を売りに行くようだ。マユも乗り気なので、仕方なくついて行く。
｢せんせー！｣
先生はアミに誰にでも見せる愛想笑いをし、｢何か質問でも？｣
彼はこちらに気づいているはずだが、あくまでも知らぬ振りをするようだ。それはこちらにとっても好都合なので、それに乗っかって私も“先生”を見る目で二人の横に並んだ。

｢せっ先生は、彼女いるんですかっ！？ もしくは好きな人とか！｣
マユが身を乗り出して先生に尋ねる。やけに積極的だ。
マユの問いに彼はおや、と眉を動かし少し驚いた表情をしたが、その後｢さあ、どうでしょう｣とはぐらかした。
｢ええー！｣
二人の残念そうな声が響いたところで、チャイムが鳴った。

｢さあ、席について｣
先生がよく響く声でクラス全員に呼びかける。
私は欠伸を噛み殺し、日直に続いて挨拶をした。

＊＊＊＊

次に私達『極秘プロジェクト』のメンバー五人が呼び出されたのは、私の大会が終わり一区切りついた後だった。

大会について結果だけ言えば、完敗だった。
詳しくは略すが、部長は倒れた次の日には復活した。しかし痛みは完全になくなったわけではなかったらしく、コントロールが低下していた。勿論練習も完璧にこなせない。

エースが不調な私達は、一試合目は勝利したものの、二試合目で前体会で余裕勝ちした相手に負けてしまった(まあ、私は案の定応援のみだったが)。
つまり自分は役に立つどころか、仲間を敗退へと導いたわけだ。
気分は最悪。家に帰ってから私は、数時間部屋にこもった。

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