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「ああ、眠い」
「遅くまでゲームやってたんだよな」
「そうそう」
「この会話今日何回目だよ」
いつも授業が終わる度に「眠い」と口にする大河内のお陰で、もう四回もこの会話をした気がする。
五時間目が終わり、本日の授業も残すとこあと一時間となった。
今はトイレからの帰りだ。
「次は社会かあ」
なんて歩いていると、うちの教室の廊下が少し騒がしいことに気づいた。
「どうした」と大河内は近くにいる男子に訊く。
「次の社会、コンピュータ室で調べ学習するんだって」
コンピュータ室に行く度に皆盛り上がるが、パソコンをいじってて何が楽しいのか残念ながら理解出来ない。
まあ確かに昼食後の眠い板書よりはずっといいだろう。
「行くかあ」
「だな」
「……面倒くさ」
「だよな」
大河内の意見に短く同意し、社会の用意を持って教室を出る。
****
「お願いします」
とうとう六時間目が始まった。
コンピュータ室は出席番号順に座るから、隣は大河内の好きな……堀内だ。
「なあ、調べるの半分ずつにしないか?」
彼女は相変わらずのぼんやり。
「おい、堀内」
持っていたファイルで軽く頭をたたいてみる。気づくか?
「……」
俺が息を呑む中堀内は……
「何」
気づいた。
何叩いてんのよ、と言いたげな冷たい目。
……怖い。
「あ、あの、だから、さ、このプリント、上半分俺が調べるから、下半分、調べてくれないか?」
「あれえ、何キョドってんの、藤井くぅん?」
「平田君ちょっとその声をやめよう」
別に堀内を意識している訳ではない。勘違いしないでくれ。
「ん」
堀内は短く了解の返事をし、早速パソコンを……
「速っ!」
カタカタというよりは、ダカダカというような音を響かせながら、彼女は勢いよくワードを打ち込んでいく。
俺はそんな堀内に……見とれていた。
力強くキーボードを打つ細くて長い指。
耳の後ろに掛けていた黒髪が、ぱらぱらと肩にかかっていく。
切れ長の目に、透き通るような肌……
何度も言うが、別に彼女を好きな訳ではない。
しかし今まで皆が美人だと言う中、へえそうなんだくらいにしか思っていなかった。
「何意識してるんだよ、今更」
「違う平田」
確かに美人だとは思った。見とれても……いた、かもしれない。
「はいはい、見とれてないで藤井君もやりましょうね」
そこでまだ俺は一つも調べていないと気づいた。
堀内を見ると……
「できた」
彼女の流れるようなそれでいて読みやすい字で、プリントの下半分が埋められていた。
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