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戻ったって、変わらないんだな ページ44




  K「俺は死ぬのを後悔してない、むしろ本望だ」

  K「メンバーと解散する前に死ぬなんて最高じゃねーか」

さっきまでの藤ヶ谷だったら、納得していなかっただろう。けれど今の藤ヶ谷は小さく頷いた。ここまで藤ヶ谷を納得させたのは、この雰囲気だからかもしれないし、北山だから出来たことなのかもしれない。

藤ヶ谷は諦めていたのだ。最初から感じていたが、先程のように封じ込んでいただけなのだ。藤ヶ谷の心の中では、諦めの気持ちがあった。けれどそれを認めたくなかったのだ。けれどその真っすぐな北山から伝わった藤ヶ谷は嫌でも気づいてしまった。その感情に。

自分はこんなにも北山から色んな感情を貰っていたんだなと悟りを開く。すると涙は更に増して溢れかえる。瞼を閉じて泣きじゃくる藤ヶ谷に北山は微笑んで、彼の肩を優しく掴んで自分の方に顔を向けた。ビクッと反応した藤ヶ谷は反射的に北山を視界に入れる。

  K「再生しよう、藤ヶ谷。この星の仕組みに従って」

それはまるで小説の一部の台詞のようで、藤ヶ谷の胸にじわりと浸透していった。とても暖かく広がっていった。その言葉を藤ヶ谷は噛みしめるように何度も頷いた。


「戻ったって、変わらないんだな―――。」


藤ヶ谷は先程悟った時に思い浮かんだ言葉を口にする。その言葉は大きい槍となって、北山の心に突き刺さった。完全に諦めた藤ヶ谷の言葉に北山の心は何故か傷ついた。矛盾している、と北山自身もそう思った。それは藤ヶ谷に対する想いのせいなのかもしれない。

  K「……俺も好きだったよ。」

北山は思わず心の声を漏らす。その言葉を耳にすると、藤ヶ谷は一瞬動きを止めるが、しばらくして苦しそうに嗚咽しながら嬉し涙を流す。こんな姿は普通は他の人には見せないが、今まで振り回されてきた藤ヶ谷にとっては、世界で一番聞きたかった言葉になっていたのだ。

息を荒げながら床に落ちてゆく雫を見守る。北山は落ち着かせるように藤ヶ谷の背中を擦る。言ってしまったら取り返せない、と思った北山はずっと藤ヶ谷が求めていた言葉を口にする。

  K「……付き合おう。だから泣き止め」

自分の蒔いた種を拾うように言った北山だったが、藤ヶ谷にとってはこれほどまでに嬉しくて幸せだった。涙を雑に袖で拭って、北山の方を振り返る。北山は受け止めるように優しく目を細めた。その北山の身体を藤ヶ谷は包み込むように抱き着く。

すぐに北山はそれに返してくれて、藤ヶ谷の背中に手を添える。どんどん二人の体温は上がってゆく。その中二人の気持ちは幸せで満ちていて、最高の笑顔だった。

じゃあ、こっちにする?→←俺は後悔してない



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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時

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