俺は後悔してない ページ43
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F「……俺はっ!北山が好きだよっ―――」
その言葉はとても重く、文字となって表れたようにその場に反響する。北山はその言葉を聞くなり、眉間に皺を寄せて涙を必死に堪えてる様だった。北山は何故涙が湧いているのか分からない。それに対して藤ヶ谷はポロポロと涙を床に落としていた。
F「……俺は、北山が好きで好きで堪らなくて、ここまで来たんだよ?」
F「……なのに、その言い方は無くない?」
F「……俺だって、頑張ったんだよ、」
今にも泣き崩れそうな藤ヶ谷は腰を低くしながらも北山にその想いを主張した。北山の反応は変わらず、更に鼻が赤くなっているように感じる。けれど藤ヶ谷を見る北山の目は、とても真っすぐで眩しかった。
その時、藤ヶ谷は気付いてしまった。いや、最初から気付いていたけれど硬く閉じ込めていた。けれど北山の態度から感じ取ってしまい、蓋がゆっくりと開く。
藤ヶ谷はそのことを悟ると膝をついて泣き崩れた。何かを失ったような顔で静かに涙を頬に流す。その雫はとても冷たかった。北山は言葉を発することなく藤ヶ谷を見据えていた。
膝をついた藤ヶ谷に近づいた北山は、自然と藤ヶ谷を見下ろしていて軽蔑しているような目にも見えた。視界に北山の足がはっきり映り、藤ヶ谷は縋るような目で北山を見上げる。
K「……俺は後悔してない、」
その言葉を聞いて藤ヶ谷の考えは確信に変わった。ふと涙がピタリと動きを止める。北山は藤ヶ谷の前にしゃがんで、視線を合わせる。その顔はいつも決断する覚悟の表情だった。藤ヶ谷はこの顔をいつも遠いところで見ていたな、と思い浮かぶ。
いつからか、こんなに北山の傍にいたんだろう、
藤ヶ谷はふっと微笑んでしまった。今はそんな状況では無いと分かっているのに、前の関係だったらこんなに北山からこんなに近くに寄ってくれるはずがないので、自分の努力の成果が目の前に現れてつい口元が緩んでしまった。北山はその優しい藤ヶ谷の表情を見て、彼も微笑み返すと藤ヶ谷のほっぺを両手で摘まんだ。
K「何笑ってんだ、コノヤロー。俺は真剣な話をしてるんだよー」
F「ふへっ、ごえんなはい」
K「はははっ」
いつからか、さっきまでの重い空気は消えて和んでいた。これも北山の力なのかもしれない。そんな事を想ったら再び藤ヶ谷の目に涙が溢れた。それを北山は優しく拭う。北山も藤ヶ谷と共に一粒流す。その姿は藤ヶ谷にとってとても美しい光景だった。目を奪われる藤ヶ谷の目をじっと見て北山は口を開く。
K「俺は“死ぬのを”後悔してない。」
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時