ミセバヤ ページ21
藤ヶ谷の頭にその言葉が現れた。もしここで振られたら、その後は気まずくなるだけ。
責任感の強い北山は自分のせいで悩んでしまうだろう。
同じ未来をたどるだけ。
その考えが思い浮かんでしまい、藤ヶ谷は黙り込んだ。しばらく沈黙が続いてしまい、慌てて誤魔化せるような事を考える。
F「……俺は、北山ともっと仲良くなりたいからさ……」
今ここではこんな事しか言えない自分が惨めに思ったのか、藤ヶ谷は下唇を噛む。そんな藤ヶ谷を置いて北山の表情は少し明るくなっていた。
K「今更何馬鹿な事言ってんだよ、」
少し照れ臭そうにはにかむ北山に藤ヶ谷は眉をひそめながら微笑む事しか出来なかった。
それでも北山はそれを肯定に置き換えて、自分の腕を握る手をそっとどかした。
K「じゃあ、めいいっぱい楽しまなきゃな」
F「……そうだな」
北山はくるくるご機嫌に回りながら二階堂と千賀の元に小走りで向かう。藤ヶ谷はその背中を見守りながらゆっくりと彼の元に足を動かした。
その後の車内はとても賑やかだった。北山も距離を置かないで藤ヶ谷の隣にピッタリだった。藤ヶ谷は恥ずかしそうにしながらも彼との会話を楽しんだ。
たまに笑顔を見せながら会話をしている二人を見て、二階堂と千賀は再び同じように顔を見合わせる。その顔は二人とも嬉しそうな笑顔だった。
時間はあっという間に過ぎて、目的地の動物園に着いた。
二階堂と千賀は車内から飛び出るように降りて、チケット売り場まで駆け出してゆく。それを追いかけるように北山も小走りで向かう。
その三人を見据えながら藤ヶ谷は車体の隣に立ち、静かに深呼吸をした。その深呼吸は何も無いように見えて、覚悟を決めたときの深呼吸にも見えた。
動物園に入場してから二階堂は目を輝かせて駆け回り、それを追いかけるように慌てて走る千賀。それを見守るようにゆっくりと歩く北山と藤ヶ谷。
隣に並んで歩いている姿はまるでデートに来ているような気分になった藤ヶ谷は顔をほんのり赤く染めた。
それを隠すかのように手で顔を覆った。視界が狭くなり、一瞬北山が見えなくなる。
気持ちが落ち着いたのか顔から手をどけて、北山がいた所を見たがそこに彼の姿は無かった。
声には出さなかったが、心の中では物凄く焦っていた。周りを見渡してもどこにもおらず、探しに行こうと一歩踏み出した。
K「ふじがやーー!」
少し離れた所から北山の声が聞こえ、そちらを振り返る。すると手を大きく振りながらぴょんぴょんと跳ねていた。すぐその場所に向かう。
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時