《悲報》姉さんが嫁入りしちゃう…！【ヒプノシスマイク】

お姉さんが二十五人 ページ29

＿「良かったらお茶でもどうですか？」


　徒歩でデカい病院に着いたと思えば、そのまま入っていく。
　業務員用のエレベーターの地下1Ｆに降り、駐車場の非常口のような扉を開け、中に入る。

　また、エレベーターが現れ、扉が開けば広い室内。
　謎建設に驚きつつ、メイドが「A様、おかえりなさいませ」と理鶯から荷物を受け取った。


「Aさんって……」

「ああ、母がこの病院の院長なんですよ。 神宮寺さんは『婿養子』なんです」


　理鶯は無駄に、小官も何か作ろうか、とほくほくしている。
　台所も広く、とても綺麗だ。


「全て母の努力の末ですから」

　自分は大してすごくない、と話す。
　用意された紅茶の、甘い香りが鼻腔をくすぐる。
　理鶯は楽しそうに台所を見ていた。 たまに「おおっ！」とか、「これは……」なんて声が聞こえる。

「これはどうなっているんだ？」

「あ、それはですね……」


　カチャカチャと食器の音が聞こえる。
　理鶯は無口な方だと思っていたが、随分と打ち解けているようだ。


「お茶の礼だ。 小官がとっておきの材料を用いて……」

「やめろ理鶯！ 大人しく材料は使わせてもらえ！」

　病院長の娘なのですぐに診てもらえるだろうが、何の罪もない彼女に食べさせる訳にはいかない。
　きっと「刺激的な味ですね」と引きつった笑顔を浮かべるだろう。

　理鶯は「？」と首を傾げるだけだったが、彼女もこてんと首を傾げる。
　「冷蔵庫はあちらですよ」と理鶯を案内し、Aさんがこちらに戻ってきた。
　少し温くなった紅茶をお手を立てずにすすり、個包装された焼き菓子を手に取る。

　綺麗な所作の背景に厳しい躾が見え隠れし、なぜだかやるせない感情が沸きだった。


「御行儀悪ですね」


　ふふっと、楽しそうに笑う姿に少々の違和感を覚えながら「誰も見ていませんよ」と返す。


「すまない！ この肉は、小官の目利きだと蛇だと思うのだが……」

「ああ、そうですよ。 お母さんが健康にいいからって」


　……こんな可憐なお嬢さんも、まさかのゲテモノ喰いだったとは。
　なぜだか無性に嫌な予感がし、冷や汗が伝う。


「入間さんも食べてみます？」


　毒島さんこういう料理得意なんですって！ と目をキラキラを輝かせている。
　「蛇肉のスープだ！」と楽しそうに調味料を整えている理鶯を見るのは少し、いや、だいぶキツい。

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