《悲報》姉さんが嫁入りしちゃう…！【ヒプノシスマイク】

お姉さんが二十六人 ページ30

「蛇の肉は、日本ではあまり回っていないが……、そうだな。 強いて言うなら弾力に富んだ鶏肉と言えばいいのか……」

「白身魚っぽいかも。 淡白なんですよね」


　こんなことになるなら左馬刻を連れてこれば良かったと心底後悔する。
　頭を落とされた蛇を慣れた手つきで掻っ捌く理鶯に「すごい！ 器用ですね！」と尊敬の視線を送っている。 嘘だろ……。


「一応下処理もしておくか」

「鍋にお水張っておきますねー」


　心底楽しそうな笑顔を浮かべている。
　冷めきった紅茶を飲み干すと同時に「おかえりなさい」と隣室から声が聞えた。
　扉が開き、依頼主の神宮寺さんが現れる。


「おや、お疲れ様です」

「ありがとうございます、入間さん。 こちらが今回の礼です」

「……ただの護衛だけでこの額は中々のものなのでは？」

「……余計な虫が付けば、私の名が穢れるので。 今後とも、よろしくお願いしますね」


　分厚い封筒の中を確かめると、確かに万札。
　彼が欲しいのはこの病院であって、彼女ではないのかもしれない。
　つかつかとAさんに近づき、ファイリングされた資料を押し付けるように渡していた。


「ウェディングドレスを合わせてきてください。 予定は無いですよね？」

「いつに？」

「三日後です。 私は仕事が忙しいので、そちらで行っていただきます」

「構いませんよ。 では、外泊させてもらいますね」


　婚約段階だというのに、冷えきった仮面夫婦のような距離感だ。
　用件はそれだけだったらしく、「それでは」と部屋から出て行った。
　Aさんは貰った資料に目を通している。


「あ、乱数くんなんだ……」


　ぽそっと呟いたその名に、聞き覚えがある。
　まあイケブクロの三兄弟と親しいようだったし、飴村乱数と面識があっても不思議ではない。

　理鶯が「出来たぞ」と声をかけると、Aさんは台所に向かう。
　食器を『三つ』取り出しているところを見るに、俺も食べざるをえないのだろう。


「いただきまーす！」

「いただきます」

「い、いただきます……」


　二人は普通に飲んでいる。
　恐る恐るスプーンですくい、口に運ぶ。


「……」


　思ってたよりは、飲みやすい。
　美味いだろう、とこちらを見る理鶯に「美味いよ」と言えば、嬉しそうに笑った。


「だろう？ 今度は小官が一から用意した材料で作ってやろう。 Aにもご馳走する」

「ほんとですか？ 楽しみです」


　ほんとに今度は左馬刻が必要だなと思いながらため息をバレない程度についた。

オネーさんがにじゅーななにん→←お姉さんが二十五人

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す