あ、認知しなくて結構です。【花宮真】

baby＊7 ページ8

「勤務時間中にお喋りたぁ、いい度胸だなA」

「や、やだなー。コミュニケーションの一環ですよマスター」

「その割にはずいぶん親密そうな関係じゃねぇの。痴話喧嘩はよそでやれ」

「な、痴話喧嘩じゃないですって！そもそも私彼氏いませんから！」





厨房でぎゃんぎゃんと言い争う私の目の前の男、虹村修造はこの小さな喫茶店の若きマスターだ。


この店は彼の祖父から受け継いだものらしく、

ご近所さんやリピーター、受験生の憩いの場らしく一応は黒字経営らしい。

虹村さんは主に事務やクレーム、運営を担当する縁の下の力持ちだ。

たまに厨房にやってきて手伝ってくれる。


コーヒーを淹れるのはこの店で1番上手く、

私は彼よりも美味しく淹れたいと
密かに野望を燃やしている。





「まあAちゃんはこのむさ苦しい店の紅一点だし？許してあげたら良いじゃないですか」





へらり、とした調子で会話に乱入してきたのは
フロアスタッフの高尾和成だ。

コミュニケーション能力が高く、
手際も良いため基本的に何でもできるハイスペックな男だ。





「だからって見逃したらキリねぇだろが」

「別にいーじゃんこんぐらい。そうカッカすることでもねーだろ」

「ほう？サボり常習犯がデカい口叩くじゃねぇの」

「ぎゃああああ！！キブギブギブ！！」





虹村さんの発言に至極どうでも良さそうに意見したのは、キッチンスタッフの灰崎祥吾。


さっきまで皿洗いをしていたけれど、

今は残念ながら虹村さんにグリグリと拳を当てつけられている。
痛そうだ。



高校時代のコーンロウは卒業して、今は普通に伸ばしているようだ。

コーンロウをリセットするには全ての髪の毛を1度剃らなければいけないらしく、

ボウズだった時期があったらしいけれど、

それはそれで見てみたいとも思う。

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