baby*39 ページ40
Aに興味を抱いたのは恐らくあのときだ。
オレが高2のときのWC予選。
大嫌いなイイコちゃんの集まりだった誠凛とあたったとき、オレはラフプレーで奴らを肉体的にも精神的にもボコボコに潰す予定だった。
けれど試合の休憩時間、当時誠凛のマネージャーだった女に突然殴られた。平手打ちだ。
女に殴られるという非常に屈辱的な行為に目の前が真っ赤になったがその女の様子を見て、
たちまち怒りは掻き消えた。
『…あんな卑怯なマネじゃなくて正々堂々勝負してください』
『ふはっ!生憎そんな道徳的な感性なんて持ち合わせてないんでね。スポーツは楽しむためにあるもんだろ?それを楽しまなくてどうすんだよ……っつ!?』
また殴られた。今度は反対側の頬だ。
普段のオレならまず間違いなく青筋を立てるが、このときだけは違かった。
気の強そうな__自分よりもデカい野郎に手を上げるくらい__女が、
オレを睨み上げる目は涙が溢れそうで、しかもその肩が小刻みに震えていたのだ。
男…しかもラフプレーをするような性格の悪い男(オレのことだが)を殴ることが怖かったのだろう。
それなら初めから殴らなければ良いのにという話だ。
それでもこちらを睨みながらもビクビクと怯える女が、まるで猫の様だと。
庇護欲と加虐欲をそそられるこいつを見て、何かが落ちる音がした。
『それ完璧に恋でしょ』
後に原に言われたことで自覚した。
忘れられなくて、無性に腹立たしくて、なのに気付けばそいつのことばかり考えていると愚痴を漏らしたときだった。
まさか自分が、性格が人並みではない、歪んだ感性を持っている自分が、人並みに恋をするとは。
最初は驚いた。
平手打ちされて惚れるなんてどんなMだとも思った。
だが、言われてみれば確かにそうだなと妙に素直に納得できたのも事実だ。
けれどあいつは誠凛のマネージャーだ。
対するオレはあいつらが嫌いなラフプレーを指示する霧崎第一の監督兼主将。
互いの関係上、手を出せるはずがない。
それにガードも固すぎるだろう。
あそこの連中は無駄に団結感が強く、過保護な面がある。
きっと会いに行っても門前払いされて終了だ。
「(まあ良い。時期を待つか。もしかしたら気の迷いかもしれねぇしな)」
そうしてオレは、向こうに何の接触もないまま高校を卒業した。
問題はあいつへの感情が気の迷いではなく、未だにオレの中に根付くものだったことだ。
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チベスナ(プロフ) - この作品で花宮さんめっちゃ好きになりました....執着からくる一途さがもう素晴らしい、何より花宮さんぽい恋愛すぎて尊い(語彙力) (2020年9月10日 2時) (レス) id: d26d5f7a91 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - もうやばいめっちゃ名作じゃないですかああああ花みゃーが格好良すぎる…そりゃ一日で殿堂入りしますよこれは! (2020年3月10日 19時) (レス) id: da8ce484b3 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - 5話でやっと名前が「(名前)」のままだったことに気づいた我。ていうナニコレ序盤でもうにやけが止まらなさすぎるんですけど…神ですか? (2020年3月10日 18時) (レス) id: da8ce484b3 (このIDを非表示/違反報告)
き - 感動したーーーーーーー!!!! (2019年11月27日 20時) (レス) id: d95af1f9f8 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 最高過ぎです。語彙力どうでもいいぐらい最高です。最後の高尾何なんですか?涙が出そうでしたよ? 本当作者さん何で高尾をもっとイケメンにさせちゃうんですか??? (2019年5月2日 23時) (レス) id: 1dd2715002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モブA | 作成日時:2015年2月28日 0時