【銀魂】高杉さんに閉じ込められた世界でのお話

六十四 ページ19

「一刻も早く彼女を取り戻したい、というのが本音でしょうが。...彼女を組織との全面抗争に巻き込みたくはないでしょう？ですからどうです、これを機会に彼女を地球で住まわせてみては？」

「銀時だけじゃ不十分だと言ったのはてめぇだろ。地球で野放しにしてれば、また組織の天人共に連れ去られるのがおちだ。」


矛盾する言動、突然の来訪。
互いの心中を探り合う応酬をすればするほど、嫌な予感がした。


「...その不足分に関しては、私の方から護衛を出しましょう。―――今日はそのご提案に来たんですよ。彼女が宇宙御離れている間に、あなたは組織本体を叩く。地球に逃れている彼女は白夜叉と護衛に守られる。....そのあとにあなたの手の内に取り戻せば、一番効率がいいとは思いませんかねぇ。」

「おい。最初にも言っただろ、下らねぇ建前は聞きたくねぇんだよ。―――何が目的だ？自分から兵を出してまで何がしたい？」


こいつは利益に異常なほど執着し、神経質になる男。
無償で他人に与えるなど決してしない、そういう種類の人間だ。

相変わらずのとってつけたような薄っぺらい微笑を浮かべている。


「いやあね。彼女、体いじられていたでしょう？あれ実は、私が売った情報をもとに行われた実験の被験者になったからなんですよ。それでね、被験者がその後どうなったのかっていう観察データを実験元が欲しがってましてねぇ。...そりゃまあ高く売れるってわけで。」

「観察なら閉じ込めてた方がやりやすいんじゃねぇのか？」

「いえいえ。地球の生活に紛れ込んで、男に囲まれた生活の中で彼女がどうなっていくのか。...そこに興味があるようですよ？一室に閉じ込めてあなたとしかコンタクトを取らないようじゃあ、観察データとしては不十分だ。彼女にはいろんな経験をしてもらわなくちゃ、ねぇ。」


正直なところ、Aの護衛に回せるほど兵に余裕がなかった。
男の言う通りAは地球で危険な立ち位置にいる。銀時がいるとは言えど、不安要素は大きかった。

....それに何より、情報が得られない。
銀時とともに行動していることですら、男に言われなければ知ることはできなかっただろう。

それにいずれにせよ組織はぶっ潰す予定だった。
癪ではあるが男のいう通り、船にAを呼び戻して巻き込んでしまっては元も子もない。


「.....Aを観察するってなら、行動状況を俺にも報告させろ。」

「では交渉成立、ですかね。」


こいつは本当に、気に食わない。

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