第6夜 ページ7
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新しいエクソシストを迎えた翌日の昼過ぎ。
長期任務の疲れから爆睡をきめ込み、一時間ほど前やっと目を覚ました私は食堂に訪れていた。
大して美味くもないサンドイッチを口に運ぶ。
『で?』
「...」
『なんでここで食べるわけ?』
「一緒に食べる人、いないから...」
『一人で食べればいいんじゃないの?』
「...」
そう話すのは昨日の少女。
パスタを口に運びながら項垂れたかと思うと、小さな声で何かを話し始めた。
興味はないが、世話をしろと言われた手前一応耳を貸す。
「いつも、兄さんと...食べてたから。
だから...」
『...』
一人の食事は寂しいです、と...。
そんなの知らない。
ここでは皆やることがある。
一人の食事なんて当たり前だ。
エクソシストなら、尚更...。
「ここの人、みんな怖くて...」
...めんどくさいなぁ。
そう思ってバレない様にため息を一つ吐く。
『わかったよ、好きにしなよ』
途端に少女の顔が明るくなる。
そこでふと、思った。
『お前名前は?
あと年とか...イノセンスとか。
今のうちに知っとかないと後で確認するの面倒だ』
食べ終えたサンドイッチの皿を横にずらしてテーブルに肘をつく。
「リナリー・リー。
年は、6歳」
2つ下か...。
「イノセンスは...黒い靴って、大人の人たちが言ってた」
『ダークブーツ...。
どういうものか聞いてないの?』
「ううん、知らないよ」
なら近いうちにテストがあるな...。
『そう、分かった』
「え、もう行っちゃうの...?」
目の端でルーナに通信が入ったのを確認して席を立つ。
『お前と違って、暇じゃないからね』
「...」
何か言いたげに私を見つめる視線を無視しようとすると、昨日よりも強く服を引っ張られた。
『おい』
「私の名前、リナリーだよ!」
自然と低くなる声に負けじと声を発する少女を凝視する。
それでも私から目を離さない。
『.....。
ま、精々頑張んなよ
...リナリー』
「!...うん!」
初めて見た笑顔が眩しく、見ているのが辛くて逃げるように食堂を出た。
『...』
まるで照り付ける太陽の下で咲き誇る花みたいな笑顔。
眩しくて、綺麗で...。
まだ何にも染まっていない笑顔。
まだ、何にも...。
『守らなきゃ...』
無意識に零れた言葉に唇を噛み締めた。
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作者名:SHINKAI | 作成日時:2019年3月31日 13時