第4夜 生きる場所 ページ5
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『...っ』
息が詰まる。
鼻を衝く異臭に思わず片手で口許を覆うも匂いは絶てない。
『誰も、いない...』
真っ赤に染まった地面に積みあがったアクマの残骸のせいで上手く歩けない。
『...』
端に転がる人の死体。
それを一瞬目に入れるもそれはアッという間に砂となって消えてしまった。
『は、はは...』
乾いた笑いが無意識にこぼれた時、ルーナに通信が入った。
≪任務は無事遂行出来たみたいだね≫
聞こえた声に、ぴくりと肩が揺れた。
『無事...?』
≪アクマは殲滅したんだろう?
何より...≫
その先の言葉は簡単に想像がついた。
≪イノセンスを回収できた≫
『...ファインダーが、皆アクマにやられてしまいました。
近くの村の人たちも、たくさん...。
それでも任務が”無事”遂行出来たと...?』
声が震える。
進めていた足も気づけば止まっていた。
≪...ふむ。
言いたい事が多くあるようだね≫
『...』
≪だがね、任務は無事遂行された。
君がこの結果を不十分と捉えるなら、それは
...偏に君の力不足ではないだろうか?≫
『...っ!』
言われた言葉に何も言い返せない。
何も言わなくなった私に、室長はいつもと変わらない声色ですぐに帰還するようにとだけ伝え通信を切った。
『ここはまるで地獄だね...』
崩れ落ちるように座り込むと、地面に広がる血が嫌な音を立てた。
ルーナが握りしめた手の上に乗る。
『...それでももう逃げられない。
逃げ道もなければ逃げ場もない...』
そっと握りしめた手をほどく。
そこにはこれでもかと光り輝く物体
...イノセンス。
『ここが私の
...生きる場所だ』
涙を流しながら歪に笑う。
たくさんの雫が血のにじむ地面に降り注ぐ。
真っ赤な月の浮かぶ空に向かって泣き叫ぶ少女。
小さな肩を上下させ、丸く大きな瞳から涙を流す。
その雫は白い頬を流れ血を洗い流す。
小さな口から漏れる嗚咽。
生ぬるい風に靡く亜麻色の髪には赤が滲んでいる。
ボロボロの体のまま座り込む。
その全てを映したのは銀のゴーレムのみ。
少女が立つは此岸か彼岸か
地獄か否か
いずれにせよ此処が...
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少女の生きる場所...____
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作者名:SHINKAI | 作成日時:2019年3月31日 13時