第3夜 ページ4
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『なぁに?これ...』
パッと顔を上げて問うAの頭に手を乗せてクロスは答えた。
「これはな、お前のゴーレムだ」
『私の...?』
「ああ、お前だけのゴーレムだ」
そんな言葉にそっと手の中に視線を戻す。
手の中で羽を折りたたむその子と目が合う。
『私、だけの...』
「何があってもそいつはお前の傍にいてくれる」
『...名前は?』
「まだ付けてないからな...
お前が付けてやれ」
『...綺麗な銀色...それに、大きな三日月...』
見た目からは予想出来ないほんのり暖かなボディを小さな指先で撫でる。
すると僅かに擦り寄る銀。
『...決めた、お前の名前は”ルーナ”だよ!』
小さな手に乗る小さなゴーレム、ルーナは嬉しそうに羽を広げて見せた。
『これからずっと一緒だよ、よろしくね、ルーナ!』
少女は笑う。
手の中の小さなゴーレムを抱きしめて。
それを見つめる男は、優しげに...それでいて、どこか悲しげに笑っていた...____
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「イタリア南部の小さな村に、数体のアクマが目撃されたそうだ。
その村では異常気象が続いていてね。
恐らくイノセンスがあるだろう。
君の任務はアクマの殲滅と共にイノセンスの確保。
出来るね?」
『...はい』
初めて立ち入った室長室は酷く冷たかった。
初めての任務で、たった一人。
不安が募った。
それが分かったのか、周りを飛んでいたルーナが肩に乗った。
「何かあればそのゴーレムで連絡しなさい」
『分かりました』
直後に、行きなさいと言われ扉に手を掛ける。
「A」
呼ばれた名前に、反射的に足が止まる。
「戦う術も生きる術も全て教わっただろう?」
『はい...』
「私が言った事は覚えてるかな?」
『っ...はい』
「うん、いい子だね。
行きなさい」
『失礼しました』
長く冷たい廊下を歩く。
着いたのは地下水路。
さらに気温が下がる。
『覚えてる。
覚えてます...っ』
息が詰まる。
呼吸をするたびに冷たい空気が喉を刺した。
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『他者の命より自身の命を...
自身の命より...
イノセンスを...』
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作者名:SHINKAI | 作成日時:2019年3月31日 13時