第2夜 銀の相棒 ページ3
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「で?
わざわざ呼び出して...用はなんだ」
「まあまあ、そんなぴりぴりせずに。
落ち着いて下さい、クロス・マリアン元帥」
「...」
男、クロス・マリアンは隠す事もなくその端正な顔に苛立ちを浮かべる。
そんな彼の前に座るのは人の良さそうな笑顔を浮かべる現室長。
「貴方を呼んだのは他でもない、彼女 ...Aの事です」
室長から出た名前に、クロスはピクリと反応を見せた。
「そろそろあの子を使おうかと思いましてね」
使う。
それは人に対して使う言葉ではないもののはずだ。
しかしこの男はそれをあっさりと発して見せた。
何の戸惑いもなく、当然の如く。
「Aはまだ5歳だ」
「”もう”...5歳ですよ、元帥。
それに、私の決定に貴方方エクソシストが異論を唱える事は許されません」
「...」
「明朝。
Aを任務に向かわせます」
その言葉を聞くや否や、クロスは席を立ち室長室を出て行った。
「貴重なエクソシストの子供だ。
捨て駒にするつもりはありませんよ...」
誰もいなくなった部屋で、男がポツリと呟いた。
男は酷く冷たい目をして薄っすらと微笑を浮かべる...。
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「A」
数回のノックの後、クロスは扉を開いた。
中には一人の少女が部屋の中央に座りこんでいる。
少女の周りには大小様々の本が散乱している。
その内の一つを、少女はじっと見つめていた。
「A」
何の反応も見せない少女にクロスはもう一度声をかける。
すると、パッと顔をあげた少女。
肩までの亜麻色の髪に鮮血を溢したような真っ赤な瞳が目を惹く美しい少女だ。
『クロス』
鈴が転がるような声で自分の名前を呼ぶ少女、Aの傍に座りこんだクロス。
「A、今日はお前に渡したい物があって来たんだ」
渡したい物。
その言葉に反応をしたAは真っ直ぐにクロスと向き合う。
そんな彼女を見て、クロスは僅かに頬を緩めた。
「ほら、手ぇ出せ」
その言葉に素直に従うAは小さな両手をそっと差し出した。
『?』
手の上に置かれたの銀色の球体。
中央に三日月の模様が入っている以外は特に何もない。
僅かに首を傾げた瞬間。
『わぁ...!』
フワリと細長い銀色の羽を広げてみせた手の中のそれ。
赤がキラリと輝いた...。
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作者名:SHINKAI | 作成日時:2019年3月31日 13時