Episode146 ページ47
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嫌だ。
もっと他に方法はないのか、二人であいつらから逃げ切る方法が、死なずに済む方法が、何か、何か……
「A、訊いてよ。私あんな奴らに殺されるなんて嫌だ。だから……」
奈那が、そんなセリフを発した。そして微笑んだ。
「無理……無理!」
「分かってよA」
はあ、はあ、と自分の呼吸が荒くなった。目には涙が滲んだ。武器が音を鳴らすほど手が震えた。だってこんな時に限って昔の奈那が、赤橋奈那だった頃の笑顔が、声が過ぎるから。
「殺されるならあんたがいいんだって」
そいつも少し泣いた。このままでいれば、きっと私も奈那もあの組織に殺されてしまう。だからと言ってーー、そんなこと、絶対にできない、したくない。このまま二人で死ぬか、どちらか一人が生き残るか……そんな選択肢しか自分たちに残されていないのだと示す奈那を前にして、私は足りない頭で必死に二人で生き残る方法を考えた。
「お願い、A」
カタカタ、カタカタ
ハア、ハア、
ドク、ドク、
ザァアアアア………
『ずっと、とか無いのに、何でみんなそんなこと言うんだろ』
切なそうなそいつの顔が頭に浮かんだ。
ザクッ
「ーーッ奈那!」
「……あの、さ」
ブレードを握りしめる私の手を包み込むように、そいつの手が伸びて。そのままその力に引っ張られると、そいつから赤い液体が流れて。私はぽろぽろと透明な液体を流した。嫌だ、嫌だと私は泣き続ける。ざくっという皮膚を貫通するその感じたことのない感触が手に残って、どうしようもない悪寒と果てしない喪失感を残す。SEのせいで強く感じる鉄の嗅いが、よりその赤い液体が現実味を帯びさせて、一度だって感じたことのなかった『人の死』という概念を手繰り寄せてきた。
奈那は、自ら私の腕を引いて己の身を貫いた。
「私が……赤橋、奈那だったあの時間、ーーちょっとだけ……楽しかった」
さっきまで敵だった元親友は、笑った。そこにいたのは『元』親友ではなく、私の『親友』だった。最期の最期は、フィデスではなく大好きな大好きな『奈那』の顔だった。奈那が賭けた『私だけでも生き残らせる方法』は運にも左右されると噂に聞いたことがあるのだけれど、何故奈那は確信を持っていたのだろう。ねえ、教えてよ。もう一度、その声を訊かせてよ………!
ザア、ザア
『じゃあ、また紗雪明日ね』
『いないんだよ、お前の親友なんて最初から』
『ーーちょっとだけ……楽しかった』
頭に植え付けられたその声は、ずっと鳴り響く
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亜桜(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます(;▽;)更新頑張ります! (2019年1月21日 19時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 続きが気になりすぎる!!!面白すぎてヤバイです!!更新頑張ってください!応援してます!!!! (2019年1月20日 21時) (レス) id: 076cc2dab4 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - twice MOMO,loveさん» 長編にも関わらず全て読んでいただけて本当に嬉しいです(;ω;) できる限り定期的に更新していきたいと思います! (2018年12月11日 11時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
twice MOMO,love - とても面白いですっ! いっきにすべてのお話し読みおわってしまいましたッ! これからも頑張ってください!( v^-゜)♪更新お待ちしています! 長文ひつれいしました (2018年12月10日 17時) (レス) id: cfa0ae033f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - アヤカさん» ありがとうございます!!( ;∀;)がんばります!! (2018年11月25日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年10月8日 12時