Episode039 ページ40
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「わー、太刀川さん家だー」
「おい、そこの部屋絶対入るなよ」
玄関のすぐ近くにある部屋を、太刀川さんが指差して言った。「なんで?」と私は尋ねる。太刀川さんって高校生だよな。親御さんは今いないのかな?
「片付いてない」
「うわ太刀川さん部屋すげー」
「おい開けるなって言っただろ」
どうやらその部屋は太刀川さんの部屋らしく、出水がもうドアを開けてしまって。太刀川さんがバタンッとそのドアを再び閉めた。それを見ながら出水が「やるなって言われるとやりたくなるもんで」と言うものだから、引き攣った顔で太刀川さんが「お前性格悪いな」と溢した。
それは私も同意である。
太刀川さんがリビングのドアを開けて、続いて私達は中に入った。私は一番に目に入ったソファーに腰かける。太刀川さんは少し離れたテーブルのイスに後ろ向きに座って、背もたれの上に顎を乗せた。
「作戦立てましょ作戦」
私が言うと、出水が隣に座った。柚宇さんはそれを訊きながら床のカーペットの上に座って、ローテーブルの上にお菓子を広げる。
「まずは今日の反省からだ」
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会議も終わって夕方になって、今日は解散することになった。お邪魔しました、と軽く会釈をして、招かれた側の私達三人は家を出る。
「太刀川さん家、今度から溜まり場になりそーだな」
「居心地良かったもんね〜。じゃ、車来てくれてるから帰るね」
「柚宇さんさよならー」
柚宇さんはどうやら親が迎えに来てくれるらしく、奥に見える黒い車の方へ歩いて行った。ひらひらと手を振ると柚宇さんも返してくれて、彼女が車に乗り込んだあと、私と出水はまた歩き出した。少し、夕暮れに染まる空。
「出水、家どっち?」
「このまままっすぐ」
どうやら途中まで道は同じらしい。
「なー……いきなりだけどさ」
不意に出水が話しかけてきて、私は彼の顔を見上げた。
「……Aって、呼んでいい?」
「は、い……?」
出水は目を逸らして、私の顔を見ずに言った。
「……ダメなのかよ」
「いや、別にいい……けど」
やっと、出水がこちらを見た。けれど私がそう言うと「おう」とまた目を逸らしてしまう。呼び方なんて勝手にしてくれたっていいのに、改まってそんな風に言われるとなんだか照れてしまった。いやいや、出水相手に何をやっているのか。けれど少し時間が経つと互いに照れも薄れて、家につくまではまたいつも通りのどうでも良い会話を笑いながら続けた。
「あ、これ私の家」
「おう、じゃあな紗雪」
あれもしかして、家まで送ってくれた……のか?
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亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます!固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜! (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります!! (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです!続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます!!わがままな作者で申し訳ないです(汗)必ず戻ってきます…! (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2015年8月5日 16時