Episode027 ページ28
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ポイントが四千まで溜まったら、B級昇格……つまり正隊員だ。訓練で得られるポイントを予測しても、まだまだ遠いなあ、と言ったところだ。
『B級遠すぎ、一瞬で上がった太刀川さん絶対ばけもん』
『そろそろゴールは見えてきたな』
『うそでしょ』
私がメッセージを送信し、それを返信するのは出水公平。どうやら彼は順調にポイントを稼いでいるらしい。負けたくないので、もっと個人戦増やしてポイント稼ぐか?と物騒な案を検討し始めた。
「夏休み明けの中間試験は一番成績が落ちる時期だから、みんなくれぐれも手を抜かないように」
机の下で文字を打ちながら、そんな先生の言葉を右から左へと流す。まだ少し先の話なのにもう中間試験のお説教を食らうなんて、教師とは気が早い生き物だ。
『出水の学校スマホおっけーだっけ?』
『いや?全然アウト』
出水も私と同じく、スマホ禁止の学校でショートホームルームにスマホをいじるタイプの不真面目のようだ。出水だけ見つかって没収されろ。
『ショートなげ〜〜』
その出水のメッセージを見て、学校が違うのに『それな』と思わず声が出そうになる。向こうに見える米屋なんか、長話に疲れて突っ伏していた。
『米屋とか眠気に負けて向こうで死んでる』
『お前ら同じクラスだっけ』
うん、と送信して、ぱっと教室の時計を見上げる。五、四、三、二、一………
キーンコーンカーンコーン
「はい、じゃあ号令」
「起立、礼」
ありがとうございました、という言葉をクラスメイトが溢して、そして一気に教室がざわつく。帰宅する生徒、部活の予定を話す生徒、遊ぶ約束をする生徒。
「亜桜、今日このまま基地いく?」
「んー、そうしよ」
鞄を肩にかけた米屋が、私に声をかけた。さっきまで寝ていたせいか、頬に制服の後が付いている。私達の放課後の予定は他のみんなとは少し違うが、自ら飛び込んだ世界なのでその差のことをどうこう思うことはない。私はあちらの世界では、わくわくできなかったのだから。
「見てこのライン、出水もう四千ポイント見えてきたって」
「はあ?あいつまじか、オレは全然みえねーっつの」
教室を出て、角を曲がって、階段を駆け下りて、上履きを脱いで。外靴を履いて、乾いた空の下へ。
「負けたくないからランク戦漬け生活する」
「それ、付き合わされんの誰?」
「あんたか出水かな」
「言うと思った」
はは、と笑った米屋は、私の少し前を歩いた。
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亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます!固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜! (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります!! (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです!続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます!!わがままな作者で申し訳ないです(汗)必ず戻ってきます…! (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2015年8月5日 16時