Episode017 ページ18
.
「ボーダーには、チームを組むシステムがある。それで俺も隊を組もうと思っててな。使える奴を探してたんだ」
チーム。数人で組んで防衛任務に当たるシステムのことだ。今ままで何度か見たことがある。太刀川さんは空になった缶を投げては取って、投げては取ってを繰り返したが、しかしそれもぴたりと止まって、まっすぐ太刀川さんが私の目を捉えた。
「それでお前の素質を見つけた」
彼が缶を投げて、ゴミ箱に入れる。ここまで訊いても真意が分からず、「はあ……」と私は曖昧な返事を返すしかなかった。
「つまり、自分の隊をA級にするために使える奴を入隊にうながしたってことだ」
ボーダーに、階級があることは知っている。私達入隊したばかりの訓練生がC級、その上がB級で、更に上の精鋭がA級。太刀川さんの目標がどうやらそのA級に上がることだということは分かったが、それに私がどう関係して……あれ、いや、え?
「あのそれって」
「A、」
急に名前を呼ばれたものだから、はいっ、と少し改まって返事をした。太刀川さんは立ち上がり、数歩前に歩いてきて私の肩に手を置く。
「俺の隊に入れ」
「……は、い?」
「お前は絶対強くなる。だから入れ」
いきなり言われても、簡単に答えを決めることなんてできない……そう言うつもりだったのに、いざ面と向かって彼にそんな事を言われたら、断る理由なんて思い付かなくなってしまった。
「……よろしく、お願いします」
「おう」
太刀川さんのおかげで、ここにいるのだから。太刀川さんの隊に入るのに文句はないし、太刀川さんのために戦うことだって厭わない。それぐらい、私にとって太刀川慶は大きな存在になっていた。感謝してもしきれない、たった一人の恩人。
「ところで、俺の隊に入る前にやっといて欲しいことかあるんだが」
私が太刀川さんの作るチームに入ることが決まると、話題がぽんと新しいものに変わる。私は今後の展開が読めず、小首をかしげて太刀川さんの顔を見つめた。
「サイドエフェクト、ちゃんと調べてこい」
サイドエフェクト。ボーダーに入ることが決まってからその意味を調べると、それは主に”常人よりも優れた力”のことを指すようだった。私のそれはこの『脳内に直接何が視えたり聴こえたりする現象』なのだろう。
「役に立つやつだといいな、それ」
Episode018→←Episode016 桜は花に顕れる
523人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます!固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜! (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります!! (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです!続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます!!わがままな作者で申し訳ないです(汗)必ず戻ってきます…! (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:亜桜 | 作成日時:2015年8月5日 16時