太宰さんはあの(？)美人さんが嫌いなようです。【文スト】

.貮拾壱 ページ21

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「只今、戻りました。」

世界中が声を挙げていたのに、
彼女の声を聞き、彼女を見た瞬間、
世界は静かになった。

世界には誰も居なくなった。

「Aさん!!何処に行っ…」


てたんですか？
其処まで言おうとした。
然し、やはりあの人に遮られるのだ。
あの人が彼女を不安と恐怖をに、
嵐の海に、崖に、突き落とすのだ。

「現れるなと言っただろう?!
何をしに来たのかは知らないが帰れ。
自室に籠ってろ、一生だ。
否、外国(とつくに)に行け、地球の裏側に行け。
君を見ると腹立たしくなる。」

そう太宰さんは言った。
塵芥のものを見るような目で。
哀れと思うような目で。

それを、彼女は無視した。
何も怯まず、平然と淡淡と。

「……これ、組合(ギルド)と組合が
関係している組織の資料です。
前より吟味になっているかと。
敦君、ありがとう。本当に優しいのね。

じゃあ、私はもう帰ります。


もう、此処には来ません。」


太宰さんに部厚い資料を押し付け、
彼女は新しくなったドアを閉めた。

彼女は新しい人ではないようだ。
それは脆弱さでは無かった。

世界中はまた声を挙げ出した。
悲鳴を、嘆声を、母、父の名をを呼ぶ声を。

世界のXdayだ。終わるのだ。
二度会っただけで、彼女だけを思ってしまう。

彼女だけを想ってしまう。

太宰さんに何かを言われると分かって来てるのだ。
太宰さんに何かをされると分かって来てるのだ。
彼女の目は真っ直ぐだ。歪みなんてない。

恐怖など、ないのだ。
不安など、ないのだ。
嫌悪など、ないのだ。

彼を嫌いではないのだ。
彼を彼女は愛しているのだ。

人間として。


それが、分かった。なら、そうなら
やはり地球は終わりを告げる。
サイレンが鳴る。終わりを告げるチャイムが鳴るのだ。


太宰さん、あの人は、美人です。
太宰さん、分かるんです、彼女の愛が。
太宰さん、あの人は迚優しい人です。
太宰さん、貴方は愛されています。

太宰さん、貴方は可哀想な人です。


僕は小さな声で言うのだ。

「太宰さん、貴方はあの人を離すことが出来ないでしょう。」

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