彼氏が出張中につき【文スト】

十輪目 ページ10

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彼奴は病気だった



不治の病とも言われていた



流石に予想外で、驚きが強かったんだ



殺しても死ななさそうな太宰 治がまさか病魔に負けるなんて



誰も思わなかったろう



Aは見るに耐えなかった



彼女と太宰は、彼奴がポートマフィアからの仲だ




泣きじゃくるAの肩を抱いて、太宰は言い聞かせるように呟く




「大丈夫。私は君をおいては死なないさ」


約束する。彼奴は確かにそう口にした





Aもそれを信じた






でもある日


太宰の奴が僕に封筒を押し付けてきた


全部で八通の、真っ白な封筒







＿＿「乱歩さん。もし私が死んだら、これを毎日一通ずつ、あの子に渡してくれませんか」




ふざけるなと言いたくなった

殴り飛ばしたくなった





嘘をついて一番苦しむのは誰か知っているくせに


偽りには代償が伴うと身を持って知っているくせに




太宰は偽った






‥‥でも、ぼくはそこまでお人好しじゃない


それはあの二人の問題なんだし







それに、普段から飄々としている彼奴がもうすぐ命の灯火を消すかもしれない立場にたって


いつもと変わらない、胡散臭い笑顔で僕にお願いをしてるんだ


毒気を、ぬかれてしまった



僕はその手紙を受け取った






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