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また沈黙が蘇るのが心地悪くなって、何とか頭を回転させる。そういえばもうずっとこの人質に取られた態勢だ。
「そ、れよりも…! そろそろこの態勢やめない?」
「えー、やだ」
「や…!?」
むしろより強く後ろに引かれてしまった。これじゃバックハ…グ状態だ。こんな回りくどいやり方といい、ハナマルの考えてることがいまいち分からない。……と、思いたいけど、思考は何となく理解できてしまった。
あんまり、外で2人きりになるのは良くない。屋敷内を外なんて呼びたくはないけれど。何せ、担当執事制度をぐちゃぐちゃに歪ませてしまったのも私で。
…誰かと2人きりになると、けっこう、荒れてしまうから。考えただけでも胃が痛い。
「よく見えるな、痕」
「そ、うだね」
「ラムリとかに見せたらやばいぞ、絶対喰われる」
そんなことない、と言いたいがあながち否定も出来ない。前に何度かその通りなことが起きたから…。
「……みんな、さっさとこのくらいしとけば、楽になれるのにねぇ」
ハナマルが何か呟いた気がしたけど、それを聞き取れなかったのは。それと同時くらいにピトリと肌に触れるテープのような感触が迸ったからだ。
「あ…、絆創膏」
「はいはい、これで襲われないんだから感謝してよ〜? 主様」
「そうだね? ありがとう、ハナマル」
上書きされたテープの感触が、やけにざらざらしていた。…これ、ラトに見つかったらすぐに剥がされて、それで……。
うーん…………やめよう。せっかく隠してくれたんだし。2人きりの時に外したら良いよね。
「ハナマルってやっぱり、優しいよね。」
「は?……え、何急に」
「ごめんごめん。結構赤くなってるから、心配してくれたんだよね?」
普段から絆創膏を持ち歩いてるのも、自惚れても良いのかなと思ってしまう。ハナマル、あんまり怪我しないし。…もしかすると。もしかするのかも。
(…あーあ)
「優しいのはどっちだか。…脳みその髄までな」
「え?」
「そーそー、おっちょこちょいの主様が居ると
何か確執が入り混じった呟きは、頭を撫でられてまた帳消しになる。…気のせい、かな。
私は優しくなんて出来ている気がしない。それも、ちゃんと分かっているのかもしれないけど。
(本当は、……なんて言ってるうちは何も変わらないか)
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