さらば青春 ページ1
「オレたちの気持ち、受け取ってください!」
私の同期、つまり今日晴れて卒業式を迎えた梟谷の3年ズに、私は何故か目の前で横一列に並ばれ頭を下げられている。それぞれの手には自分達で引きちぎったのか、所謂制服の第二ボタンというやつが握られていた。
「え、いらない」
「「おい」」
勿論、こいつら全員から恋愛感情を向けられている、なんてハーレム的展開では断じてない。
私は3年間梟谷バレー部のマネージャーを務めてきた。きっとからかい半分、残りの半分はこいつらなりに感謝の気持ちを込めてくれているのだろう。
馬鹿だなあ、感謝なんていらないのに。一緒に夢を見させてくれて、毎日必死になって、本当に充実した3年間だった。
…いや、やっぱり少しは感謝して欲しいかも。主に木兎。
それにしても感謝の気持ちが第二ボタンって。
「そんなもの、しかもそんなに大量に私が貰っちゃったらファンの子に殺されちゃう」
案の定3年生は全員既に揉みくちゃにされていて、見る限りもうボタンは残っていないし、ボタンどころかネクタイやら校章やら、奪えるものは全部奪われているようだった。もしかしたら、ジャージとかも取られたんじゃないだろうか。いつも思ったたんだけど、これは窃盗にはあたらないんだろうか。
そんなモテ男たちに、誰もが狙っているであろう第二ボタンをこぞって渡されては、学生生活最終日にして私の命が危うくなる。これまでも嫌がらせ受けることなくもなかったんだぞ。まあ一貫して無視してやったけど。
「3年マネージャー勤め上げたくせに何言ってんだお前」
「いいから貰っとけ。お前以上に貰い手に相応しいやつなんて誰もいねーんだよ」
「「オレたちの本命貰ってください」」
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作者名:くろひー | 作成日時:2021年10月7日 21時