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『ああ、ありがとう！私は大丈夫だから！』
とは言ったが、全然大丈夫ではない。あのような近距離まで近づかれたら、○○の心蔵が壊れてしまいそう。心臓はドキドキ・・・いや、最早バクバクと言った方が正しい。バクバクと動き、足が若干震える。
もう向き合っているだけでも恥ずかしく、この場から逃れようと覚束ない足取りで駆けた。
「ちょっと、逃げないでよ！」
直ぐに逃げたつもりだが、足の長い紫原に敵う事等出来る筈がない。○○はあっという間に紫原に捕まった。
パシッと手を掴まれ、○○は後ろを振り返る。
「オレ、全然大丈夫そうには見えないんだけどぉ？」
『〜〜〜っ！』
不機嫌なオーラ丸出しの紫原に見つめられ、○○は何も言えずそっぽを向いた。その様子を紫原が暫く見ていたが、やがて溜息を漏らした。
「・・・とりあえず、保健室行こー」
そう言うとグイッと手を引っ張り、保管室へと足を向ける。
『ちょ、ちょっと！待って待って！私病人じゃないよ！？』
「さっき足元ふらついてたし、顔も赤い・・・。病人じゃーん」
スタスタと歩く紫原に歩きを止めようと試みるも、小走りで追いつくのがやっとだ。
『本当に大丈夫だってば！』
少し声を張り上げて言えば、ピタッと紫原が止まってくれた。それはいいのだが、急に止まられて○○は紫原の背中にぶつかってしまった。これで、紫原にぶつかってしまったのは、本日２回目となる。
「じゃあ、さっきから様子おかしいのは何？」
『う・・・っ。そ、それは・・・』
手を離す事なく、こちらを振り返ってジッと見つめてくる紫原。その視線は、正直に言わないと離さないと言っているようだ。これは、ちゃんと言わないといけないのだろう。こうしてずっと手を掴まれている訳にはいかない。もう、覚悟して言うしかない。
『実は・・・。私の夢に、紫原君が現れて・・・』
「え？オレが○○ちんの夢に？それで？」
一瞬で紫原の目がキラキラと輝いた。続きが聞きたいと、先を促される。
『えっと・・・』
見た夢の話をするのはとても恥ずかしいのだが、○○は先を続けた。
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作者名：桜輝 | 作成日時：2020年12月11日 21時
