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お願い ページ16

「大丈夫。Aは一人じゃないし、“失敗作”でもないよ。今はわからないことも、もうすぐわかるようになるから。だからね、大丈夫。泣かなくても大丈夫だよ」

『うぅ……ひっく、あああぁんっ!!』

真菰がポンポンとリズムよく私の背中を叩く。
それは徐々に睡魔を呼び寄せ、瞼が重くなっていく。

「大丈夫。起きたときには、もう嫌な思いなんてしないから。私が、させないから。だから、今はゆっくり休んで」

私は真菰にしがみついたまま、スンと鼻をならす。
瞼を閉じ切ると視界が闇に染まり、そのまま夢に逃げるように意識を手放した。



「その子は、真菰の知り合いなのか?」

Aが落ち着いて眠ったのを見計らい、炭治郎は声を潜めて真菰に問いかける。

「うん。Aもね、私たちと同じように鱗滝さんに育てられて……炭治郎よりも早く鱗滝さんに認められた、炭治郎の姉弟子。先輩なんだよ」

真菰はAの髪を指先に絡めながらそう答える。
そしてAの睫毛で光る涙を見据え悲しそうに目を細めると、炭治郎を見上げて口を開く。

「……炭治郎にお願いがあるの」

「俺に?」

「うん。Aはね、とっても強いんだよ。ずっと一人で鍛練してきて、剣技においては私や錆兎よりも実力があると思う。……でもね、一人で強くなってしまったからこそ、その力は諸刃の剣なの」

炭治郎は眉根を寄せる。
先程涙を流していた彼女の姿と、彼女から漂った悲しみの匂い。

彼女の力が諸刃の剣というのは、初対面の炭治郎もしみじみと感じていた。

「だからね、炭治郎がAに寄り添ってあげて。そうすれば、Aはもっと強くなる。炭治郎もAの動きを学んで、もっと強くなれると思うの」


__お願いだから、“失敗作”だなんて言わないで。一人になんかしないでよぉ……っ。


「勿論だ。こんなにも悲しい匂いをさせている人を、放ってなんかおけないからな」

彼女の言葉を思い出し、炭治郎は深く頷いて微笑む。
真菰も炭治郎に微笑み返し、Aの耳元でぽつりと囁いた。


「__よかったね、A」




明晰夢、というんだっけ。
夢の中で、夢だと気がつく夢。

私は鱗滝さんの家にいて、正座する鱗滝さんの背中を見下ろしていた。
鱗滝さんは割れた狐の面を前に、肩を僅かに震わせている。

鱗滝さん、泣いてるの?

お願い、泣かないで。

私、必ず帰るから。
鱗滝さんのところに必ず帰ってくるから。

だから、それまで、


__待ってて。

剣を交えて→←悲しい匂い



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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時

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