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悲しい匂い ページ15

彼は確か、鱗滝さんの新しい弟子の……。

いつの間にか私の後ろには、市松模様の羽織を着た青年が立っていた。
以前見た時よりも赫灼の髪が伸びており、心配そうに揺らぐ赤い瞳が私を捉える。

『……悲しい、匂い?』

「あぁ。俺は人より鼻が利くんだ」

青年は自身の鼻を指差し、少しだけ口角を上げてみせる。

匂いって、人の感情までわかるものだっけ……?

「君からは、胸が苦しくなるくらい悲しい匂いがする。……何かあったなら、話してみてくれないか? もしかしたら、何か役に立てることがあるかもしれない」

彼は眉を下げ、マメだらけの固くなった指先で私の目尻を拭った。

『あ……』

初対面ではあるが、彼の優しさがしみじみと伝わってくる。

……彼になら、話してもいいのかな。

きっと私は、この辛い思いを上手く言葉にすることができないだろう。
けれど、彼は私がどれだけ時間をかけても、最後まで話を聞いてくれる。その上で、親身になって考えてくれる。
そんな気がする。


『わ、私……』

「うん」

勇気を出して口を開くと、彼は優しく相槌を打って続きの言葉を促す。


__あの人の“失敗作”。


その時、錆兎の鋭い言葉が脳内を過った。


……待って。
私が、鱗滝さんの“失敗作”。
なら彼は?
鱗滝さんの新しい弟子である彼は、何?

鱗滝さんは、私が“失敗作”だから、彼を新しい弟子にして__。


『……っ!』

一度止まりかけた涙が再び溢れ出し、それを見た彼はあからさまに狼狽え始める。

「ど、どうしたんだ!? すまない! その、無理に聞き出すつもりはないんだ! ただ、何か力になれればと……!」


「炭治郎、いきなりどうしたの? ……A?」

第三者の声が聞こえ、彼と同時にその声の聞こえた方向を振り向く。
そこには目を丸くした真菰が立っており、真菰はすぐさまこちらに駆け寄って私の背中を擦る。

「A、どうしたの? 何かあったの?」

真菰の優しい声が嬉しくて、同時に苦しくもあって。
私は真菰の着物に顔を埋めて、子供のように泣きじゃくる。

『私、私ねっ、鱗滝さんが大好きなんだよ。だからね、鱗滝さんの役に立ちたくて、恩返しがしたくてっ。必死に頑張ったのに……っ。絆とか繋がりとか、もうわかんないよ! 誰も教えてくれないんだもん! どうせ離れるなら期待なんてさせないでよ、最初から近づかないでよ。

__お願いだから、“失敗作”だなんて言わないで。一人になんかしないでよぉ……っ』

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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時

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