願い 6 ページ7
家から出て1ブロックは真っ直ぐ進み、1つ目の角を左に曲がる。そこには大型のショッピングモール店がある。ここに来るだけで食材も衣服も電化製品も全て揃う。近所にこんな素晴らしいところがあって良かったと、Aは来る度に思っていた。
「すごいな!ここは何だ!?」「うおっ、歩かなくても上に行けるのか!」「眩しいな、目が痛いくらいだ!!」
悪魔は先程からずっとこの調子でキョロキョロと辺りを見回している。とてもうるさい。
「見たことないの?」
人がまばらになってから小さな声で悪魔に問う。外に出て分かったが、やはり他の人にこのうるさい子供みたいな奴は見えないらしい。だとすると気安く話しかけたら空中に話している変人扱いだ。それは絶対嫌だ。
悪魔は他の人の願いも叶えてきたと言っていた。ならばショッピングモールやエスカレーターも見たことあるはずだ。そう言えば、Aの家からビルを見たときも同じ反応をしていたな。
「ああ、言っていなかったか。俺は願いを叶えると眠るんだ。ざっと300年ぐらいな」
300年!?なるほど、確かにエスカレーターや大型ショッピングモールを知らないわけだ。起きたばかりの悪魔にとってこの世界は宝石箱だろう。
「まあそれは俺の願いが叶えられなかったときだけどな」
……悪魔の願い?悪魔にも願いがあるのか。
小首を傾げると悪魔がハッとした顔になる。あまりの形相に歩くのを止めた。
「俺としたことが!条件の話を全くしていなかったな!願いを叶えられるのは本当だが、まだ続きがあるんだ!」
悪魔は自身の黒メッシュが入った黒髪をなびかせる。悪魔たる堂々とした態度で、人類を見下した目をして、悪魔は言った。
「俺はお前の願いを1つだけ叶えることができる。だがな、俺の願いを当てて叶えてくれるのであれば俺は今後お前のどんな命令でも聞く悪魔となるんだ。願いをいくつでも叶えられる、お前だけの悪魔にな!」
つまり、他にも願いがあるなら悪魔の願いを叶えろ、ということだ。自分中心で国を作ることもできる。他人からしたら喉から手が出るほどその力を欲しがるだろう。欲望があり願いが生まれる分それを叶えることができるのだから。
だが残念なのか幸福なのか、 Aには願いなどない。よって悪魔の願いを叶える必要もない。なので
「ふーん、そうなんだー」
と今までにないほど棒読みで返して歩き始めた。悪魔ってなんであんなどや顔で話すのだろうか。
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ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時