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願い 5 ページ6

受け入れることは認めること。人間は常に否定を持つ生き物だ。感性の違いや欲望や、成長も。全てに一度否定が入る。「こうじゃない」「間違っている。だから次はこうしよう」。そうやって繰り返して生きている。
だから、受け入れて認めることは怖いことだ。死すらも受け入れている彼は人間として、何かの感情が欠けているのではと心配になってしまう。

「考え方が、人じゃないみたいだな」

辛うじて悪魔はそう返した。そうやって受け入れるだけの人生はひどく単純なものに見える。

「そう?もう人生に興味ない人は皆こうなんじゃないの」

人生を諦めている人に会うこと自体が初めてなのだ。こうなんじゃないの、と聞かれても分からない。

「さあ、俺は知らないな。お前みたいなタイプは初めてだ」

人間は老いたくないんじゃないのか。一生若いままで、病気を治して、より楽に人生を歩みたいんじゃないのか。悪魔が知っている『人間』とは違っているので分からない。
知らないことは怖い。が、面白い。この人間はきっと悪魔の知らないタイプの人間だ。この人間の願いを叶えたとき、きっと自分は今までの定番で当たり前の願いを叶えたときの何倍も満たされるだろう。

「ますますお前の願いを叶えたくなった」

するとAは、はぁ?と思い切り顔をしかめた。「何言ってんだコイツ」という顔だ。実際Aはそう思っている。

「僕だって悪魔に会うの初めてだし、悪魔ってこんなに話聞かないんだなって驚いたよ」

願いはない。それでいいのだ。自分が抱いている願いはただのワガママなのだから。
だから早く出ていってくれ。

「話を聞かないんじゃなくて、欲望に忠実に生きていると言ってくれ。その方がワイルドに感じるだろ」

「いや全く感じないから」

悪魔は、そうか?と言って太陽のように笑った。何だか調子が狂う。悪魔とはもっと恐ろしいものだと思っていたのだが、この悪魔はクラスに一人はいる愛すべき馬鹿キャラのテンションだ。

これ以上話していると自分も馬鹿になってしまいそうだ。早々に話を切り上げ立ち上がる。

「どこ行くんだ?」

「外。夕飯の材料がないから」

「外!?」

悪魔は目を輝かせた。先程から行きたいと言っていた外に行けるのだ。わくわくが止まらない。

「あまり遠くに行かないよ。スーパー近所だし」

なんて声は悪魔に届いていないようだ。子供みたいにはしゃいでいる。
全く、とAは少し微笑んだ。

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ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時

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