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願い 22 ページ23

外に行ってくる、と言った悪魔はしばらく帰ってこなかった。

……キツく言いすぎたかな?
いやいや、何で僕があの精神が子供な悪魔の心配をしなくちゃいけないんだ。

Aはベッドに潜り目を閉じる。悪魔が言った言葉を思い出していた。
『両親の分まで生きようって、抗おうって思わないのか!?』
Aだって、初めは抗おうって思っていた。でもその分生きようとは思わなかった。"その分生きよう"なんて自分で考える自己承認だ。自分でそう思うことで生きることを肯定している。生きるのは、自分が何をしたいかを求める旅だ。誰かの分と称して生きるのは、違うんじゃないかと思う。
したいことはない。だからAは抗ってまで生きない。

「ただいま」

オルバが戻ってきたようだ。反対側を向いているのでオルバの顔が分からないが、先程の萎れた声ではなくいくらか元気な声で少し安心した。

「A、別に話したくないなら話さなくていいから聞いてくれ。まずは俺の考えを押し付けてすまない。病気を患っているお前が一番病気についてわかっているのに、辛さを分からない俺が酷いことを言ってしまった」

いや、恐らく悪魔が正しいのだ。まず普通の人間なら生きようと努力する。誰かの分まで、とはいかなくても目的を見つけて生きることに向かって進むのだ。間違っているのは、ひねくれた考え方をしているのは自分の方だと、Aは理解している。

「だが後悔はしていない。俺の考えは変わらないぞ。お前が苦しまなくていいだろ。もう十分頑張った。自分で自分を痛めつけるの、止めにしないか?私たちが死んだのは貴方のせいだって、Aの両親はそんなこと言うような人達なのか?」

Aは悪魔の方を向いた。

「違うだろう。写真を見たりAから話を聞いたりしているが、そんな人達には見えなかった。もう止めよう。自分主体で生きていいんだ」

帰ってくるまでに悪魔が考えたことだった。Aは死ななきゃ、と暗示を自分で掛けている気がしたから。

「……だって、そう思っておかないと、罪悪感で死にそうなんだ……ッ!」

言葉と共に出たのは涙だ。

「すごく迷惑を掛けたのにっ、自分だけ生きたなんて嫌なんだ!両親が生きる予定だった日々を僕だけが生きるって、考えただけで罪悪感に押しつぶされそうだよッ!だから、僕は死ななきゃいけないんだ」

「いいや、自由になって、いいんだぞ」

悪魔は子供のように泣きじゃくるAを抱きしめるように包んだ。

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ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時

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