【urt】恋する乙女は無敵なのです。【usss】

彼女の寂しい誕生日 ページ35

　
　
春も近づく3月。
それはつまり、うらたさんがツアーで忙しくなる季節ということ。

活動に全力な彼が好きだから、ワガママ言いません。


ーーーたとえ、ここ2週間会えていなくても！




*





「電話ありがとうございます、もう少しで枯れるところでした」

『俺水なの？』




ある日の夜。地方公演に行っているうらたさんから電話がかかってきた。

私も私で頑張ろうと曲作りに励んだりはしてみても、やっぱり寂しさは拭えないわけで。
水って言ってもあながち間違いじゃないくらい、彼は私の生活に不可欠な存在なのだと感じる。




『別にワガママ言ってもいいよ。ほっといちゃって悪いなって思うし』




ああ、彼氏になったうらたさんの優しさたるや。
でもいいんです、文句は一つもないのです。




「うらたさんの事好きですけど、浦島坂田船のうらたぬきさんの事も大好きで、応援したいんです」



だから私のこと気にせず頑張ってください！



ちょっとの強がりとエールを込めて言うと、彼は安心したようにありがとう、と言った。




『でも来週の月曜は流石に会いに行くわ。つばきの誕生日だし』



遅くなるかもしれないけど、楽しみに待ってて。



電話越しの穏やかな声に、私は喜びを隠しきれずに返事をした。
















今年の私の誕生日は月曜日で、うらたさんは直前の土日に地方公演。月曜日に帰ってくる予定だと聞いていたから、会うのは難しいと思っていたけれど、彼は少しでもと会いにきてくれるらしい。



お祝いはまた別の日にちゃんとやるけど、やっぱ当日会いたいじゃん。



私だけじゃなく彼も同じように思ってくれていたことが嬉しい。

無理しないでくださいねと言ったくせにバッチリおめかしして、期待して。
22時頃に私の家に来てくれると連絡を受けてから、ずっとソワソワして待っていた。




ーーーそして、現在。23時50分。私は部屋で1人。




最初、約束の時間を30分ほど過ぎたあたりに電話をしてみたけれど繋がらず。メッセージも既読はつかない。

彼は無断で遅れたりする人じゃないから、疲れて寝ちゃってるのかなと想像して、何度も電話をかけるの申し訳ないような気がした。


仕方ないよ。頑張ってるもん。

元々会えないと思ってたんだし。


平気な理由を唱えて、だけど瞳にじんわり何かが滲む。

私、付き合ってから随分欲張りになっちゃったな。




スマホの画面が0:00を映して、私の誕生日の終わりを告げていた。
　
　

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