車 ページ11
折原さんの車は居酒屋さんの近くのコインパーキングに停められていた。
「まあ、僕の車じゃないんですけどね？」
『え、そうなんですか…？』
「いわゆるカーシェアリング、っていうやつやな」
『あ、名前は聞いた事あります』
「よう知っとるなあ。偉い偉い」
キャリーケースを後ろの荷台に詰めている折原さんを眺めていただけなのに、頭を撫でられた。もしかして、折原さんには妹や弟がいるのだろうか。それとも私の頭の位置がちょうど良いだけなのだろうか。
どちらにしても子供扱いされているようで少し悲しいけれど、好きな人から触れてもらえる事は嬉しくて、複雑な気持ちになる。
「Aちゃん、助手席おいで」
『いいんですか…？』
「お家まで道案内するんやから、そっちの方が都合ええやろ」
『…では言葉に甘えて…』
折原さんはスマートに助手席の扉を開けて、私に乗るように促す。おずおずと乗り込むと、私が座った事を確認してから、扉を閉めてくれた。
そしてぐるりと運転席側まで回り、車の外でジャケットを脱いで、後部座席にジャケットを投げ入れてから、運転席に乗り込む折原さん。
どの場面を切り取っても格好良すぎて、目のやり場に困った私はチラチラと横目でしか折原さんを見る事が出来ない。
「Aちゃん」
『は、はい！』
「そんな緊張せえへんでも大丈夫ですよ。お家、どこら辺？」
私が住所を伝えると、折原さんはカーナビを操作し始めた。
『あ、自分でやります…！』
「ええのええの。…え、ここら辺なん？」
折原さんは私の家の地図を見て、何かに驚いた様子だった。
「Aちゃんのお家の近所に、僕の友達も住んでるんですよ」
『そうなんですね！』
「これなら迷わず行けそうやなー」
良かったわーと言いながら、折原さんはシャツの袖を捲る。チラリと見えた腕が思ったよりもしっかりとしていて、改めて折原さんが大人の男性なのだと意識させられた。
「ほな、発車しますよー。シートベルトよろしゅうな」
『はい』
ドキドキしている私を余所に、折原さんはハンドルを切り始めた。
折原さんの運転はとてもスムーズで、この人は一体どこまで女子のツボを抑えているのだろうか、とぼんやり考えて、考える事をやめた。
(どうせ私みたいなお子様なんて相手にしてもらないよね…)
最初から叶わないと分かっているなら、無謀な事はしたくない。
この臆病な性格のせいで恋愛が出来なくなっている事を自覚しながらも、私は一歩踏み出す事ができないのだ。
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紫苑(プロフ) - リリトさん» リリトさん、コメントありがとうございます！ そんな偶然があるんですね？！自分で名前を設定しておきながら驚きました笑 (2020年11月9日 19時) (
レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリト - 漢字は違うけど、本名同じ人おったｗｗ (2020年10月22日 17時) (レス) id: 5c9bfe90e0 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ひよりんさん» こんばんは。メッセージを返信させて頂きましたので、ご確認頂ければ幸いです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
ひよりん(プロフ) - こんにちは。メッセージ送らせていただいたので、見ていただければ幸いです。 (2020年8月21日 21時) (レス) id: 222226e292 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - センラさん推しさん» センラさん推しさん、コメントありがとうございます！ 神様だなんて畏れ多いです…！ですがありがとうございます、嬉しいです。 これからも頑張りますね！ (2020年3月18日 22時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年11月1日 18時
