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ページ20

Aの部屋は、彼女がここを出た数日前からそのままにされていたようだ。
文机に置かれたままの本や、散らかったままの衣類がそれを物語っていた。

「いったい誰に似たんだ」

土方は笑うと部屋を見渡した。
散らかってはいるものの、年頃の少女の部屋なのだろう、簡素だが可愛らしい桃色のうさぎのぬいぐるみが布団の横に鎮座している。
この部屋には自分の知らない間に大きくなっていた妹の成長の痕跡が残っていた。
本棚にある古い児童書、昔に流行った女児向けのキャラクターがプリントされた布団。

文机の机から紙の端が覗いている。

それは手紙だった。
古い紙であることが一目でわかった
封はされておらず、宛名もない。

土方は迷ったが、中身を読むことにした。
彼女が残した天人に関するなにかかもしれないと思ったのだ。

中身はやはり古い便箋で、平仮名の多い拙い文字で所々丸い滲みがある。

それは幼いAが兄に向けて書いた手紙であった。

中には、喧嘩をして酷いことを言ってしまった謝罪からはじまり、兄に会いたい旨と、切ない心情が書かれていた。
彼女は泣きながら手紙を書いたのだろう。
丸い滲みの部分には皺がついている。

この手紙は兄が所在不明である為に届かなかったのだろう。

Aの兄である土方十四郎は、それを握り締めてから懐にしまった。
早く妹を助け出さなければならないと思った。

土方は妹を想い目を伏せる。
それから老婆を起こさぬよう静かに部屋を出た。
そのまま団子屋を出ようとした時、昼間座った机に気配を感じ振り向く。

「急ぐのかい?」

老婆だった。

「なんだ、婆さんはもう寝てる時間の筈だろう」

老婆は笑うと「としぞうさん、Aちゃんを頼むよ」と土方の手を握った。

「婆さん、あんた本当は俺のきちんと名前覚えてるだろ」

「Aちゃんから毎日のように話を聞いていたからねぇ、.......Aちゃんを、頼むよ。十四郎さん」

土方はそれに答えず老婆の手を外しこんどこそ団子屋を出た。

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さくらんぼ☆*.゚︎ - 初コメ失礼します!このお話 最高です!続き気になります!更新頑張ってくださいね!!応援してます! (2022年12月12日 0時) (レス) id: def3760315 (このIDを非表示/違反報告)
薄良(プロフ) - お餅さん» うわあああ申し訳ねぇ.......細かい設定を忘れ去っていました。普通に主人公の年齢と合いませんね.......細かい年齢表記削除しておきますありがとうございます (2020年2月20日 0時) (レス) id: 38546ea573 (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - あの…総悟が5歳のときって土方さんいましたっけ?土方さんが来たのって総悟が13くらいのときじゃありませんでした?違ったらすみません (2020年2月19日 18時) (レス) id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:薄良 | 作成日時:2019年5月6日 0時

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