やめたら、その6 ページ18
妹が攫われて三日ほど経ったが、天人の情報は未だ何も入手出来ていない。
土方十四郎は二日間の非番を利用し妹が拾われたという団子屋を探していた。
自らの元を飛び出したまだ幼かった妹が移動できる距離の団子屋を見つければいいのだと、奇しくも銀時と同じ思考にたどり着いたのだった。
田舎にある団子屋の数などたかが知れている。
Aを拾った団子屋は想定よりも早く見つかった。
中に入り、試しにみたらし団子を頼むと腰の曲がった、しかし元気な老婆はいそいそと厨に入り、皿に乗った団子と、緑茶の入った湯呑みを二つ盆に乗せ戻ってくる。皿と湯呑みを一組土方の前に置くと、残ったもう一組をすぐ隣に置いて土方の横に腰掛けた。
「土方.......なんだったかねえ、としぞうくんだっけぇ?」
老婆は土方を見据えゆっくり口を開く。
「十四郎だ。妹が世話になっていた団子屋だな?」
土方が問うと老婆は上品に笑って返した。
「Aちゃんからはねぇ、血が繋がってないって聞かされていたけれど、よく似てるねぇ.......Aちゃんは元気なのかい?」
ゆっくり土方に話しかける老婆は遠くを見ながらAの身を案じた。
「Aは、今は別の星に居る。俺は婆さんに天人の情報を聞きに来た」
土方の言葉には応えずに、老婆は語り出す。
「はじめてねぇ、Aちゃんに会った時。私はまだもう少し背筋がまっすぐで、Aちゃんは小さくてボロボロでねぇ。お腹を空かせて泣いていたんだよ」
土方には、ここで話を遮ることも出来た。
しかし自分の知らないAの話を黙って聞いた。
「だからねぇ、あの時も今みたいにAちゃんと私にそれぞれお団子を出して、一緒に食べながら話を聞いたんだ。Aちゃんはお団子を食べると、美味しい美味しいって言ってねぇまた泣いたよ。
お団子を全部食べて、お茶を飲みながら泣き止んだAちゃんは、私に沢山お礼を言ってね、それから凄く深刻そうな顔をして、何を言うかと思ったら、ふふふ、としぞうさん。あの子なんて言ったとおもう?」
「『どうしましょう、わたし、おだいがはらえません』って」
老婆は土方に問いかけたにも関わらずすぐに答えを話した。
「驚いたさぁ、Aちゃんにおうちの人の事や色んなことを沢山聞いてね、そうしてあの子の帰る家が、あの子を置いて江戸に行ってしまったことを知ったのさ」
老婆の話はまだ続く。
土方は黙って緑茶を啜った。
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さくらんぼ☆*.゚︎ - 初コメ失礼します!このお話 最高です!続き気になります!更新頑張ってくださいね!!応援してます! (2022年12月12日 0時) (レス) id: def3760315 (このIDを非表示/違反報告)
薄良(プロフ) - お餅さん» うわあああ申し訳ねぇ.......細かい設定を忘れ去っていました。普通に主人公の年齢と合いませんね.......細かい年齢表記削除しておきますありがとうございます (2020年2月20日 0時) (レス) id: 38546ea573 (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - あの…総悟が5歳のときって土方さんいましたっけ?土方さんが来たのって総悟が13くらいのときじゃありませんでした?違ったらすみません (2020年2月19日 18時) (レス) id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:薄良 | 作成日時:2019年5月6日 0時