1年前のあの日8 ページ28
飲めないなりに頼んだ、甘いソフトドリンク。
僕がグラスをかき混ぜると、氷がからんころんと良い音で弾かれる。
せっかくAと二人きりになる機会だったのに。
七海もお膳立てしてくれたのに。
何故かAは皆で、というか三人で飲みたがった。
それから三時間後。
彼女は完全に酔い潰れ、机にうつ伏せている。
ここまで飲むのは、珍しい。
「もうラストオーダー来たし、帰りますか」
七海が腕時計を見て、テーブル向かいで潰れているAを見やり、残った酒を煽った。
「だね」
僕も、隣で寝ている彼女の頭を、指で軽くつつきながら答える。
すやすや寝息をたてている。
多少つついたところで全然起きやしない。
全くの危機感のなさに、ため息をつく。
例え二人で飲んでいても、こうなったかもしれない。信頼して安心してもらえるのは良いのだが。
大方、僕といても何も起こらないと思われてるんだろう。
この3時間、別れた原因を何度か探ってみたが、Aに上手く誤魔化され続けた。
あれだけ泣いておいて原因を隠そうとするAの態度が、振られた男を庇うようで、イラついてしまう。
「ていうかさ、やっぱ殺しとく？Aの事、こんなに傷つけた男」
思わず声を低くし語気を強めて言えば、Aは本気でひいてる。
七海にも「あなたヤバいですね」と蔑むように言われる始末だ。ちょっとムッとしてしまう。
「怒ってくれるのは嬉しいんだけど、悟が言うと冗談に聞こえないー。彼に嫌がらせとかしないでね？あの人は悪くないんだから」
「でも男側がふったんだろ？そいつが悪いじゃん」
さり気なく問い詰めてみるが。
「別れちゃったんだから、何だっていいでしょ」
そうかわされ、Aはグラスの酒を飲み干す。
「よし、店員さん、新しいお酒〜」
ピンポーンと呼び鈴を鳴らすA。
「A飲みすぎ。その辺にしときなよ」
「だいじょーぶだって。すみません、さっきのお酒ひとつ〜！」
何が大丈夫、だ。
やって来た若い女性店員への注文も、段々呂律が回らなくなっている。
店員が席を去ろうとする所を逃さず、つんつんと腕をつついた。耳元で、小声で囁く。
「さっきの注文、キャンセルで。お冷にしといて」
若い店員が、顔を真っ赤にして頷き、去っていく。
「あ〜！悟、またくどいてる〜」
僕を指さし、絡み酒するAに、苦笑した。
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しゃっと(プロフ) - しぃぷさん» コメントありがとうございます！自己満だなぁと思いながら書いてたので、こんな褒めてもらえるなんて…！嬉しすぎます。ありがとうございます！また新しいお話もがんばるので、そちらにもぜひお越しください〜。 (2021年2月4日 23時) (
レス) id: 79cfbcfb05 (このIDを非表示/違反報告)
しぃぷ(プロフ) - いや、マジで天才かと思いました。めっちゃ好き過ぎる……話の構成も流れも最高です！！完結おめでとうございます！新作が出たら1番に応援しに行きますね！素敵な作品を有難う御座います！！ (2021年2月2日 13時) (レス) id: c3f6824249 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゃっと | 作成日時：2020年12月5日 14時
