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【第弍拾捌話】 横浜:探偵社内:事務室 ページ40

「何だ之はッ?!」

時遡り、数刻前の探偵社事務室。

敦や与謝野、医務室の外で福沢と乱歩を見送った国木田は、福沢達が医務室の扉を閉めた数刻後経過し発生した黒い霧に驚愕した。

「……おうぇっ」

「何だい、此れ!?」

「ッ、事務員は霧に近寄るな! 成る可く窓の傍で身を低くしろ!」

「なッ、如何したンですか!!?」

ぶすぶす、閉じた医務室の扉の隙間から滲み出る黒い霧。

霧は一瞬にて探偵社を混乱させた。
然し、混乱状態でも避難指示を出せたのは、流石とも云えるだろう。

「……くそッ、今日は厄日だ!」

一般の事務員を窓際に避難させ、医務室近くに国木田、与謝野、敦。そして路地裏の調査から戻った谷崎達が事務員を守る位置で黒霧に対峙する。

「国木田さん、此れに物理攻撃は効きません!」

自身の腕を異能で『虎化』させた敦が、霧に向けて打撃を繰り出す。

然し……自然の摂理とも云えるだろう、形を持たない霧は一瞬払われるだけ。
又じわじわと間を埋め、近付いて来る。

「う゛っ……ぇ」

「寒気が酷いね……気持ち悪ィ……」

「敦、口を覆って距離を取れ! 与謝野さんは後方に下がり賢治と交換(チェンジ)を!」

「判りました!……与謝野さん、此方に」

「全員、此の霧は吸うな!……力が、取られるッ……」

「国木田!!?」

医務室の扉から数歩分しか離れて居なかった、最前線の国木田の腰程迄を霧は覆い、どんどん濃さを増して対峙して居る敦達を呑み込んで行く。

じわじわと躯に這い上がって来る黒霧は触れる場所から体温を奪い、呼吸を締め上げる。

扉の一番近い位置に居る国木田はもう殆ど黒霧に覆われ、動こうとしても身動きの取れない状態だ。助け出そうとした敦が黒霧に何度も攻撃を仕掛けても、逆に敦を取り込むように黒霧が迫る。

(……なっん、だ此れ……?! 苦しい……躯の力が、抜けていく……!?)

深淵に沈める様に黒霧は躯に絡み付き、ゆっくりゆっくり意識を奪って行く。
まるで自身の離してはいけないモノ(・・・・・・・・・・・・・)を侵食する様な、魂を抜き取って行かれる様な感覚。

霧から少し離れた場所では、他の調査員達が必死に風を起こし霧を留めていた。

(……社長達を……出さなくては………)

ゆらゆらと朧気になる意識を必死に繋ぎ止め、遠くに感じる医務室の扉に国木田は手を伸ばす。

扉向こうに、二人は居る筈だから。

【第弍拾玖話】 横浜:探偵社内:事務室→←おちゆくときに



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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした!!とても楽しい作品でした!! (2020年10月11日 1時) (レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います!続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます!これからも頑張ってください! (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ!リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね?)でお願いします! (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:焼きまんじゅう | 作成日時:2017年10月9日 5時

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