私たちに愛はない【灰谷蘭】

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出会いはどれくらい前だったっけ。






barで出会ったことは覚えているけど、何処のbarかは覚えていない。



黒と、紫だかピンクだかの髪色に顔が良くないとこんな色には出来ないわ、と見蕩れた覚えがある。


そんな私に気がついたその人が私に近寄って、酒を交わした。






そんな事が、数回あった。


それだけの、そんなことだけの関係。




たまたま、互いに少しタイプだっただけ。


たまたま、互いに少し疲れていただけ。






一夜だけ一線を超えて、


好きとも嫌いとも、もちろん愛してるなんてことも分からないような関係で、私たちは結婚した。







色々とかっ飛ばしすぎていることは私も分かってる。



そんな結婚から1年経った今でも、私はずっと、疑問のまま。






元々子供は産めない体だと言われた。





別に、結婚願望も、子供が欲しい気持ちもなかった。






だけども、親は結婚しろと酷くしつこくお見合い写真なんてものまで出してくる始末。



さらにあの頃の私は、男性に付きまとわれていたこともあり、早急に男が必要だった。







分かってる。なんとも自分勝手。



結婚はしたくないが男が必要。


我ながら、変なことを言っている自覚はあった。






そんな時に出会った、恋愛はしたくないが女が必要な男。



それが、灰谷蘭だった。




考える時間もほとんどなく出会って2ヶ月、婚姻届に名前を書いた。




指輪なんてものも、もちろんない。









利害が一致した、ただそれだけ。







そんなことを言うと、結婚を舐めているだとか何とか言われるだろうけど、これも1つの形だと思ってもらうしかない。





そう、そして、最初の方に言ったように




その結婚から、今日で1年、彼はもちろん、朝から家にはいない。









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