甘い接吻。【浦島坂田船】

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「は？帰らなきゃって…お前は自分の意志で来たんじゃないんだろ？」

『まぁ、はい…』

「なら喰われる前に帰れ、俺が人間に手出さないの珍しいんだからな」


早く、と私を急かすうらたさん
帰れと言われても私は家出の身だし、あの家になんか二度と帰りたくない
かと言って喰われて自分の人生を終えるのなんて絶対嫌だ

ここは腹をくくって言うしかない


『私、一応令嬢なんですけど…親から逃げたくてここに行き着いたんです』

「だから何」

『だから、あの殺さない程度なら大丈夫なので、ここに住ましてもらってもいいですか…』


私だってまたあんなことをされるのは少し気が引けるけど家に帰るくらいなら、と思った

うらたさんは口をあんぐり開けたまま瞬きをしない。えっ瞬きしなくて大丈夫なの
そう思っていたら我にかえったのか頭を振ってそれから私を見つめふっ、と笑った
え、今バカにされた？


『な、なんですか…』

「いや、初めて見たわここに住みたいとか言った人間。お前面白いな」

『ば、ばかにしてます！？』

「いやー？ほかの4人がなんて言うかわかんねーからとりあえずリビング行こう、来て」


そう言ってうらたさんは私の手をぎゅっと握って歩き出した
何だかうらたさんは優しい。あの人の後だからか分かんないけど少し安心した


「言っとくけど、俺も一応お前喰えるから、あんまり信用してると死ぬぞ」


私の心を読んだかのようにそう言ったうらたさん
握られた手はありえないくらい冷たくてあぁ、やっぱり化物なんだなと背筋が凍った

窓から見えた満月が恐ろしいほど丸く、綺麗だった

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