【あんスタ】おくびょううさぎ【仁兎なずな】【完】

４羽 〜Side:紫之〜 ページ5

「お姉ちゃん」



ベンチに座って小説を読むお姉ちゃんに、後ろから抱き着いてみる。


びくりと肩が揺れて、少し悲鳴がこぼれた。


後ろを向いたお姉ちゃんのほっぺたは、膨らんでいる。



「しののん？年上で遊んじゃダメだよー？」



ぽんぽんとお姉ちゃんの手が僕の頭を撫でる。


その手を掴んで、お姉ちゃんを立たせる。


ぽかんとしたお姉ちゃんの顔は、僕より少し下…に〜ちゃんと同じくらい。



「お姉ちゃんに、質問があるんです。あの…」



“僕のこと、どう思ってますか？”


“に〜ちゃんのこと、好きなんですか？”


どっちを聞けばいいのか、分からない。


言葉に詰まってうつむいた僕の頭に、何かが乗った。


お姉ちゃんの手。



「しののんの聞きたい事、分かったよ。
でも…ごめんね。
私は、に〜ちゃんが好きだから」



少し震えた声で、お姉ちゃんが言う。



どこかで、そんな気はしてた。


に〜ちゃんがいると、お姉ちゃんは嬉しそうになる。


に〜ちゃんといると、ほんの少し赤くなるほっぺた。


楽しそうにに〜ちゃんと話す姿。


全部見てきた。


だからこそ、胸が痛い。



「に〜ちゃんは屋上にいるだろうから…行ってあげてください」



顔を上げて笑うと、お姉ちゃんの顔から笑顔が消えた。



「こんな顔のしののん置いていくなんて、私にはできないよ」



そう言って、お姉ちゃんの腕が背中に回る。



僕が好きになったお姉ちゃんが、ここにいた。

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