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閑散とした大聖堂裏。
表に咲き誇っていた花々は身を潜める。
この石畳は、鬱蒼とした外界と繋がる小さな寂れた門と、騎士が真面目に姿勢を正して守っている地下への階段へと繋がっている。
ギギィ、と耳障りな音を立て、そのひっそりと構える門が開かれた。ハットを深く被り黒いスーツを身に纏った、いかにもという出で立ちの男性だった。
「こんばんは。ふふ、お祈りにいらしたのですか?」
僕は微笑みと共に軽い冗談を言う。
彼はとても美しいとは言えないような笑みで「そんなところだ」と答える。
この返し。恐らく馴れた常連のお客様。
一杯興じるだけならば、態々ここを選ぶ事はない。僕の予想が当たれば、この方は第3階層より下の階層をご利用するだろう。
「貴方の勝利を祈っていますよ」
軽く両手を組んで見せると、彼は、
「はは、大司教様のお祈りがついていれば確実だな!」
「ふふ、どうでしょう。貴方自身が祈らなければ、神はお力を貸して下さらないかもしれませんよ」
こういう、神聖な祈りを勘違いされる方には困ってしまいますね。運に見離されて大敗し、僕のせいにされてはたまったものではありませんから。
「お先にどうぞ、お進み下さい」
僕は彼を先に地下へ続く階段へ通す。
「存分にお楽しみ下さいね」
そうして大聖堂に貢献して下さいね、その言葉は飲み込んで。敬礼する騎士に一礼を返し、暗い階段を一段一段下りていく。
そこにある扉を開けば、酒と煙草の香りが立ち込めた。まるで掃き溜めのようだ。下層のカジノ、闘技場も然り。働いて頂いているスタッフと司教には申し訳ない気持ちもあるのだが。
酒瓶を開けてグラスを片手に談笑する司教とドリーチェを見て、自責も何処かへ吹き飛んでいく。
彼らが満足なら、これ以上の事はない。
「お二人とも、お疲れ様です。こんばんは」
僕が一声かけると、歓迎するように二人は慣れた手付きで葡萄酒を開け始めた。
僕は彼らの前の空いていたカウンター席にかける。
まだ、何も言っていないのですけれどね。
「ふふ、ありがとうございます」
僕がここに来る時はいつも決まって葡萄酒を頼んでいた。それだけ彼らもここでの仕事が長いということ。そして、案外この職が彼らの天職であるということ。
とくとく、と注がれていく濃い紫が僕の心を満たしていく。脚の長いグラスを目線の高さに上げて。
「乾杯、ですね」
寝静まる夜に【フィーナ】→←悪魔と葡萄酒【ジゼラ・ヘルファム】
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開(プロフ) - いろいろな作品更新されたあとありますがPCが重くて間違えて触ってしまい更新された状態になってしまいました申し訳ないです、、一応触ってしまっただけなのでみなさまの文章に言葉が欠ける、増えるなどは無いです申し訳ありません (2022年3月21日 7時) (レス) id: 62c5ad2de3 (このIDを非表示/違反報告)
理紗@プロフ一部更新(プロフ) - 作者様を巻き込みたくないので出来れば他の作者のCSSに変えた方が良いと思います (2021年3月3日 2時) (レス) id: c9fefc2be8 (このIDを非表示/違反報告)
理紗@プロフ一部更新(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。私のCSSを変えていただけないでしょうか?どうやら再配布禁止の画像を使っていたので申し訳ないですが。大変ご迷惑をかけしました。全部が違反した分けではないのですが保証も出来ないのでよろしくお願いします。 (2021年3月3日 2時) (レス) id: c9fefc2be8 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - Melcheさん» 更新お疲れ様でした! シャルルさんとテレーゼさんは前からのお知り合いだったんですね。それにしても、シャルルさん視点のお話、面白いですよね笑 軽快な書き方がとても好きです! (2021年2月22日 23時) (レス) id: af1699faf6 (このIDを非表示/違反報告)
Melche(プロフ) - 更新終わりました!最後のオチが上手くいかなすぎて泣きそうになりました() (2021年2月21日 20時) (レス) id: 10c523e9ad (このIDを非表示/違反報告)
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