勝者と敗者 ページ8
【A視点】
優勝、した……。優勝したんだ、私……!
ステージから降りて時間が経つにつれ、その実感が胸の奥から染み出して、意識できるようになってくる。
「本当にありがとう、レイア、アステ……!!」
控室に戻り、レイアとアステとハイタッチをしたり、ハグをしたりと、喜びを分かち合う。
手に握っているプリンセスキーの重みが誇らしい。
そこに控室の扉を開く音がして、反射的に振り返った。……スピカだった。
「……スピカ」
「ああ……変な気は遣わなくていいよ。おめでとう、A」
口ではそう言えていても、表情は正直だった。一目見て落ち込んでいるのがわかる。
よく見ると目が潤んでいて、そこに彼女が感じている悔しさを垣間見た。
「ありがとう。でも、僅差だったじゃない。正直、負けるんじゃないかと不安だったんだ」
スピカの口が閉ざされた。しまった。これは今私が言うべき言葉ではなかった。
今のスピカにとっては、どれだけ僅差であっても私は『勝者』で、スピカは『敗者』なんだ。敗者は勝者にどんな言葉をかけられても、見下されているとしか受け取れない。スピカのような子は特にそうだ。
「僅差でも、勝利は勝利だよ。あたしにあなたを超すほどの力が足りなかっただけ。
次は勝てるようにもっと努力しなきゃね」
かける言葉が見当たらない私を見て、スピカもそれ以上何も言わなかった。
気まずい空気が流れていた。
その空気を入れ替えるかのように、再び控室の扉がものすごい勢いで開けられた。
「Aさん! すみません、すぐに来てください!」
シアズムさんが通路から半身を乗り出すような姿勢で私に声をかけてきた。かなり焦っている様子だ。
「あ……はい! スピカ、じゃあ、またね」
「うん……」
仕方なく、何か言いたそうなスピカを置いて控室を出た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「Aさんに会いたいっていう人が来ているんです。きっとAさんも知っている人ですよ」と、通路を歩きながらシアズムさんが事情を伝えてくれた。その来てくれた人が誰なのかは教えてくれなかったけれど、シアズムさんのこの緊張具合からすると、ただ者ではないのだろう。
シアズムさんはある扉の前で立ち止まり、この部屋の中に入ってほしいと言った。
言われるままに扉を開けると、そこは思ったよりも広い部屋だった。周りに置いてあるものからして、ここが本部なのだろう。
そして、部屋の中央にいる人物と目が合って、言葉を失った。
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頂志桜(サム)(プロフ) - はじゅさん» お久しぶりです!コメントありがとうございます!逆ギレされるほど気に入ってもらえて、うれしいです(謎) でも、期末の勉強を疎かにしてはいけませんよ〜(と言っている私もテスト期間なので人のこと言えませんが……笑) お互い頑張りましょう! (2018年6月26日 22時) (レス) id: 1b8d8957f6 (このIDを非表示/違反報告)
はじゅ - おかげで期末全然勉強できません!!(こんなに面白い作品をありがとうございます神様) (2018年6月26日 20時) (レス) id: 26f7e5e552 (このIDを非表示/違反報告)
はじゅ - お久しぶりです!もういつまで経ってもなんでこんなに面白いんですか!!(謎の逆ギレ (2018年6月26日 20時) (レス) id: 26f7e5e552 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 深雪さん» コメントありがとうございます!そして、お誕生日おめでとうございます!!実は、このシリーズも今日が誕生日なんです!感慨深いですね〜 (2018年6月12日 21時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
深雪 - きょうはわたしのたんじょうび (2018年6月12日 12時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2018年6月9日 15時