きな臭い予感 ページ49
『ただ、一つ不思議なことがあるんです』
プリムはそう言って、眉をひそめた。
『その実験場の通信回線をくまなく探った結果、一つだけ現在も通信に使われているものを見つけてしまったんです』
どういうことだ? 中枢への通信は凍結と同時に途絶えているはず。中枢を介さずに他の場所と通信している? ……まさか。
「それ、代表のところに直接繋がっている、とかじゃないよな……?」
『……大正解ですよ、アランさん』
プリムが諦めたように呟いたとき、血の気が引く音を聞いた。
代表、あなたは一体何を考え、何をしているんですか……!
「プリム、変なことを訊くが、答えられるなら答えてくれ。その実験場の現在の消費電力量はどれくらいだ?」
『たった一日で約80万kWh。笑っちゃうくらい膨大な量を消費していますよ』
プリムと俺は、おそらく同じことを危惧している。
その実験場は、まだ稼働している。中枢を介さず、ひっそりと、直接代表の手で、実験が行われている。
その実験が『S計画』に関係するものかどうかはわからない。だが、何かきな臭いものを感じる。新たな犠牲が出そうな、感じたくなかった予感が全身を冷たく包み込む。
「……実験場がどこか、わかるんだろ? 教えてくれないか」
俺は、心の奥底から溢れ出る怒りと、焦り、そして知らなければならない使命感に駆られていた。自分がこれから先どうなるかなんて、気にしていられなかった。
『まさかあなた、実験場に乗り込もうなんて考えているんじゃないでしょうね?』
プリムが俺の焦りを見抜いたように、小さくも鋭い声で俺を咎めるように言った。
それでも俺の決意は揺るがなかった。
「そうするしかないだろ。犠牲が出る前に止める。出てからじゃ遅いんだ」
プリムはため息を一つ吐き、ゆるゆると首を降った。
『僕もあなたの考えには賛成ですよ。ただ、あなたが事を起こしたらAさんがどうなることか……』
そう、ただ一つ気がかりなこと。俺のせいで、俺に対抗したフレア団員がAに危害を加える可能性があることだ。
「ああ……だけど、あいつなら大丈夫だ。あいつは強い。ここで俺が行かない方が、あいつに怒られる」
Aはいつだってそうだ。自分よりも他人を優先する。そこが長所であり短所だが、そんな優しくて強いあいつを信頼しているから。
『止めても無駄みたいですね。一応、Aさんについては対策を打っておきますよ』
プリムはふっと笑って、実験場の場所を教えてくれた。
20人がお気に入り
「アニメ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
頂志桜(サム)(プロフ) - はじゅさん» お久しぶりです!コメントありがとうございます!逆ギレされるほど気に入ってもらえて、うれしいです(謎) でも、期末の勉強を疎かにしてはいけませんよ〜(と言っている私もテスト期間なので人のこと言えませんが……笑) お互い頑張りましょう! (2018年6月26日 22時) (レス) id: 1b8d8957f6 (このIDを非表示/違反報告)
はじゅ - おかげで期末全然勉強できません!!(こんなに面白い作品をありがとうございます神様) (2018年6月26日 20時) (レス) id: 26f7e5e552 (このIDを非表示/違反報告)
はじゅ - お久しぶりです!もういつまで経ってもなんでこんなに面白いんですか!!(謎の逆ギレ (2018年6月26日 20時) (レス) id: 26f7e5e552 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 深雪さん» コメントありがとうございます!そして、お誕生日おめでとうございます!!実は、このシリーズも今日が誕生日なんです!感慨深いですね〜 (2018年6月12日 21時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
深雪 - きょうはわたしのたんじょうび (2018年6月12日 12時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:頂志桜 | 作成日時:2018年6月9日 15時