初耳 ページ45
「言ったろ？ 草木の手入れはわたし一人で行っているのではない、と。定期的に手伝ってくれている人がいるんじゃよ」
フクジさんはまたお茶を啜った。
「その人の名は、シトラス。きみの母親じゃよ」
「お、お母さんが！？」
思わず両手で持っていた湯呑みを倒しそうになった。危ない危ない。
「そうじゃ。あの人はなかなかいい腕をしておる」
まあ確かに、あの人なら草木の手入れくらいできるとは思うけど、ここに手伝いに来てるなんて……初耳だ。
いつから手伝いに来てたんだろう。全然気づかなかった。
「シトラスからきみのことは聞いていた。きみがポケモンにかける愛情、きみの強さ。シトラスはうれしそうに語っていたぞ」
そんなこと言われると、なんか恥ずかしいな。
ちょっと落ち着こうと思って、お茶を少しずつ飲む。あ、このお茶おいしい。
「きみとバトルをして、わたしはきみがシトラスの娘だと確信した。シトラスの言った通り、きみはポケモンを愛し、愛され、自分の持っている知識を活用することができている。見事なものだった」
フクジさんはにこっと笑い、私のバトルを褒めてくれた。うれしくてつい笑ってしまう。
「そうじゃな、その笑みじゃ。きみのことを話しているときのシトラスそっくりじゃ」
「親子じゃのう」としみじみと呟くフクジさん。そっか、やっぱり遺伝は逃れられないんだね。
その後もフクジさんといろんな話をした。お母さんについて、ポケモンについて、人生についても少し。
そして、アランのことも話した。
「そうか。想い人と離れないといけない、とな……」
「はい。でも、仕方ないことなんです。彼は私のことを思って、決断してくれたんですから。だから私、今は一人で……いえ、私の自慢の5体と一緒に、また会ったときには彼を驚かせられるくらい成長するって決めたんです」
私が決意を宣言すると、フクジさんは突然手元の湯呑みに影を落とし、何か真剣に考えているような顔になった。
「A、きみは……」
フクジさんは一旦口をつぐんだ。言うべき言葉をじっくり探している様子だ。
居心地の悪い沈黙が、残り少ない湯呑みの中身を揺らす。
「きみは……その人の決断なら、なんでも受け入れられるのか？ たとえ、それがきみの意思とは違うものだったとしても」
フクジさんの声は真剣そのものだった。
ここでの答えが、これからの人生を変える。そんなふうに思えるほど、厳粛な空気だった。
正直に答えなければ。考えを言葉にする。
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頂志桜(サム)(プロフ) - はじゅさん» お久しぶりです！コメントありがとうございます！逆ギレされるほど気に入ってもらえて、うれしいです(謎) でも、期末の勉強を疎かにしてはいけませんよ〜(と言っている私もテスト期間なので人のこと言えませんが……笑) お互い頑張りましょう！ (2018年6月26日 22時) (
レス) id: 1b8d8957f6 (このIDを非表示/違反報告)
はじゅ - おかげで期末全然勉強できません！！（こんなに面白い作品をありがとうございます神様） (2018年6月26日 20時) (レス) id: 26f7e5e552 (このIDを非表示/違反報告)
はじゅ - お久しぶりです！もういつまで経ってもなんでこんなに面白いんですか！！（謎の逆ギレ (2018年6月26日 20時) (レス) id: 26f7e5e552 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 深雪さん» コメントありがとうございます！そして、お誕生日おめでとうございます！！実は、このシリーズも今日が誕生日なんです！感慨深いですね〜 (2018年6月12日 21時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
深雪 - きょうはわたしのたんじょうび (2018年6月12日 12時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：頂志桜 | 作成日時：2018年6月9日 15時
